カレントテラピー 32-9 サンプル

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Current Therapy 2014 Vol.32 No.9 29脂質異常症治療のガイドラインを巡って861Ⅳ ACC/AHAガイドラインのリスク評価における問題点今回のガイドライン改訂に対していくつかの批判が出ているが,最も問題とされているのはスタチンの適用範囲が拡大することである.Pencinaらは,米国全国健康・栄養調査のデータに新ガイドラインを適用し,40~75歳の米国人では,ATP- Ⅲ(Adult TreatmentPanel Third)と比べて1, 280万人(同年代成人の37.5%から48.6%へ)増えると推計している5).図2にガイドラインの改定でスタチンの適用対象となったものの内訳を示した.Aは二次予防(ASCVDの既往)分であるが,LDL -C 100 mg/dL以上という基準がなくなったため治療対象者が240万人増加した.Bは糖尿病であるが,LDL-Cが100 mg/dL以上だったのが70 mg/dL以上になったため220万人増加した.そしてCは820万人という最大の増加となっている.これは,従来は絶対リスクとLDL -C 値の組み合わせで治療対象が決まっていたのに対して(例:「10年以内の冠動脈疾患リスクが10%未満かつLDL-C 160 mg/dL以上の場合は服薬治療」など),今回はほぼLDL -Cの値に関係なく(厳密には70~189 mg/dL),10年以内のASCVDリスク7.5%以上を治療対象としたためと思われる.さらに年代別にみると60歳未満ではスタチン適用者はあまり変わらないのに対し,60~75歳では男性のスタチン適用者が30.4%から87.4%に増加するという驚くべき試算が出ている.これは前述の理由に加えて高齢層の場合はエンドポイントに入った脳卒中の影響を大きく受けたためである.また開発に用いた地域コホートのベースラインデータが古く,ASCVDリスクの過大評価になっているという批判もあり,最近の発症リスク等を用いた補正(キャリブレーション)が必要と指摘されている6).Ⅴ 日本人集団におけるリスク評価Pooled Risk equationsを日本人に適用するとどうなるかを検証した.現在,日本ではいくつかのリスク評価ツールが使用可能である.それを用いて仮想症例AさんとBさんのリスク評価を行い,Pooled Riskequationsと比較した(表1).用いたツールは,NIPPON DATA80(冠動脈疾患)7),久山町スコア8),吹田スコア9)である.各症例のプロフィールは表の脚注に示した.特に各指標のエンドポイントの相違に着目する必要があり,久山町のエンドポイントの範囲が最も広くNIPPON DATA80が最も狭い.そ表2 SCOREによるリスク評価に基づく脂質管理SCOREチャートによる動脈硬化性疾患死亡確率(%)LDL-Cのレベル(mg/dL)<70mg/dL 70 to<100mg/dL 100 to<155mg/dL 155 to<190mg/dL >190mg/dL<1% 治療不要治療不要生活習慣の改善生活習慣の改善生活習慣の改善,コントロール不良なら服薬治療を考慮?1% to<5% 生活習慣の改善生活習慣の改善生活習慣の改善,コントロール不良なら服薬治療を考慮生活習慣の改善,コントロール不良なら服薬治療を考慮生活習慣の改善,コントロール不良なら服薬治療を考慮>5% to<10%,or high risk生活習慣の改善,服薬治療も考慮生活習慣の改善,服薬治療も考慮生活習慣の改善に加えてただちに服薬治療を開始生活習慣の改善に加えてただちに服薬治療を開始生活習慣の改善に加えてただちに服薬治療を開始?10% or veryhigh risk生活習慣の改善,服薬治療も考慮生活習慣の改善に加えてただちに服薬治療を開始生活習慣の改善に加えてただちに服薬治療を開始生活習慣の改善に加えてただちに服薬治療を開始生活習慣の改善に加えてただちに服薬治療を開始Very high risk:CVDの既往,糖尿病(2型,1型で臓器障害あり),CKD(eGFR<60mL/分/1.73㎡)High risk:一つの危険因子のレベルが極端に高い場合(家族性脂質異常症や重症高血圧)〔参考文献3)より引用翻訳〕