カレントテラピー 32-9 サンプル

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Current Therapy 2014 Vol.32 No.9 27859尿病については,コホート研究で危険因子として同定され,かつこれらを低下させて動脈硬化性疾患を減少させたという無作為化比較対照試験も多くある.このような危険因子はそう多くなく,必然的にリスク評価に用いる診療情報はエビデンスが確立した古典的な指標で構成されることになる.絶対リスクを予測するためのツールとしては,スコアリングテーブル(危険因子を得点化して合計する方式)とリスクチャート(縦軸と横軸に別々の危険因子をレベル別に配して交点のマス目を絶対リスク別に色分けして表示する方式)がある(表1).いずれもコホート研究から危険因子保有の有無やそのレベル別の動脈硬化性疾患の罹患率や死亡率を算出して作成されている.Framinghamスコアでは男女別に,それぞれの患者の年齢,総コレステロール,喫煙,HDL-C,収縮期血圧を得点化し,その合計得点で10年以内の冠動脈疾患(冠動脈性死亡と非致死性心筋梗塞)の発症率を求めるようになっている.そして例えば「10年以内の冠動脈疾患発症リスクが20%以上かつLDL -C 100 mg/dL以上の場合は服薬治療を考慮する」というような治療指針が示されていた.一方,SCOREはリスクチャート式であり,性別,年齢,総コレステロール,喫煙,収縮期血圧を用いて脳卒中を含む動脈硬化性疾患による10年以内の死亡率を求める.なお同じ危険因子レベルの患者でも国によって死亡率が異なるため,SCOREは死亡率の低い国(ベルギー,フランス,ギリシャ,イタリア,ルクセンブルク,スペイン,スイス,ポルトガル)で用いるものと高い国(イギリス,ドイツなど)で用いるものに分かれている.図1 3)に低リスク国用のチャートを示した.そして動脈硬化性疾患の死亡確率とLDL-Cレベルで治療方針が決定される(表2).Ⅲ ACC/AHAガイドラインにおけるリスク評価2013年のACC/AHAガイドラインではNew PooledCohort ASCVD Risk equations(以下,Pooled Riskequations)をリスク評価に用いることになった4).ほかでも解説されるので詳細は省くが,このガイドラインの治療方針はスタチン治療を軸に構築されている.そしてスタチンの有効性と安全性から,治療が有益と判断される対象として,①二次予防,②LDL -Cが190mg/dL以上,③LDL-Cが70~189mg/dLの糖尿病患者(40~75歳),④LDL-Cが70~189mg/dL,表1 代表的な動脈硬化性疾患の絶対リスク予測チャートによる評価例ツール名リスク評価方式評価期間評価に用いている危険因子エンドポイント(予測対象となるイベント)推計リスク例ACC/AHAリスクスコア(Pooled Risk equations)4)スコアリングテーブル(*1)10年(*2)性別,年齢,人種(アフリカンアメリカンか否か),総コレステロール,HDL-C,収縮期血圧,降圧治療,糖尿病,喫煙動脈硬化性心血管疾患(致死性・非致死性の冠動脈疾患及び脳卒中)の発症Aさん 22.8%Bさん 0.8%NIPPON DATA80リスクチャート(冠動脈疾患)7)リスク評価チャート10年年齢,総コレステロール,喫煙,収縮期血圧,随時血糖(性別に評価)冠動脈疾患死亡Aさん 1-2%Bさん <0.5%久山町スコア8) スコアリングテーブル10年性別,年齢,LDL-C,HDL-C,糖尿病,喫煙心筋梗塞の発症,心突然死,冠血行再建術,脳卒中の発症Aさん 21.7%Bさん 2.4%吹田スコア9) スコアリングテーブル10年性別,年齢,総コレステロールまたはLDL-C,HDL-C,高血圧,喫煙,糖尿病,CKD心筋梗塞の発症,心突然死,冠血行再建術Aさん 10%(TCモデル)/14%(LDLモデル)Bさん <1%(TCモデル)/<1%(LDLモデル)日本人の推計リスク例Aさん:55歳男性,総コレステロール265mg/dL,LDL-C 185mg/dL,HDL-C 38mg/dL,収縮期血圧150mmHg,拡張期血圧90mmHg,糖尿病なし,喫煙あり,降圧治療なし,CKDなしBさん:45歳女性,総コレステロール200mg/dL,LDL-C 120mg/dL,HDL-C 55mg/dL,収縮期血圧130mmHg,拡張期血圧80mmHg,糖尿病なし,喫煙なし,降圧治療なし,CKDなし*1 http://my.americanheart.org/professional/StatementsGuidelines/PreventionGuidelines/Prevention -Guidelines_UCM_457698_SubHomePage.jspよりExcelファイル入手可能,オンラインバージョンもあり*2 生涯リスクの算出も20~59歳のみで可能