カレントテラピー 32-8 サンプル

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Current Therapy 2014 Vol.32 No.8 7721救急医療の現状と展望― セーフティネットを求めて―企画慶應義塾大学医学部救急医学教室教授堀 進悟この度,カレントテラピー編集部から救急医療特集のご依頼を頂戴したが,同誌では救急医療の特集は初めてとのことであった.そこで,救急領域以外で活躍する読者に日本の救急医療の現状と展望を解説することを目的として,救急医療のホットなトピックス,すなわち高齢者,外傷,ER,集中治療,心肺停止,災害,航空搬送について,第一線で活躍する先生方にご執筆をお願いした.各トピックスを通じて,救急医は何を成し得たか,日本の救急医療の将来をどのように考えているかについて,ありのままを真摯にお伝えしたい.もちろん,救急医療は救急医のみによって完遂できるものではなく,他科の医師,他職種の協力がなければ成立しない.救急は医の原点と言われてきたが,現代の救急医療は昔からあった救急医療とは異なる.世界各国においても,救急医療の発展は,1970年初頭からの救急医学の誕生(救急医の誕生)にその源流をたどることができる.40年前に,米国,欧州,そして日本においても,救急医療を専門的に行う医師集団が出現し,やがて学会をつくり,専門医制度をつくり,救急医療の中心を担い,あるいは米国のように多数の救急医を国是として輩出し,全国の救急外来(Emergency Department:ED)が救急医によって運営される国も誕生した.国家や医療制度,社会の相違により,救急医療制度の詳細は異なっても,その本質は異ならない.英米(Anglo-American model)では救急医はEDを中心に働き,欧州(Franco-German model)では病院前を中心に働き,日本では救命センター(ICU)を中心に救急医は活動してきた.40年の間に先進国では社会の年齢構成,疾病構造が変化し,非外傷,高齢者の救急患者が増加するようになった.日本では,2004年から新研修医体制によりすべての医師が3カ月の救急研修を受けるようになり,これを契機として救急医療の対象を最重症の救急患者のみに限定しないER型救急医療を行う病院も増加してきた.このように,日本の救急医療の流れは山の頂上(重症患者)への救命ケアから始まり,救急医学の成長とともに,裾野に広がりつつある.そして,救急医学の潮流は先進国にとどまらず,例えばアジア各国の救急医学の勢いは,過日に東京で開催された第7回アジア救急医学会を見れば明らかである.一方で,救急医療の問題は山積みし,なかでも高齢者の増加への対応は喫緊の課題である.救急医療の目標はセーフティネットの確保であるから,われわれは高齢化社会に対応できる準備を進め,あるいは準備の必要性を社会に訴えなければならない.救急医療がセーフティネットという意味は,電気,水道,通信などと同じレベルで,生活に欠かせないインフラであることを意味する.われわれの暮らす社会は,救急医療を含めたセーフティネットなしには成立し得ない.本特集により,読者諸兄が救急医療の現状と展望の一端をご理解願えれば,誠に幸甚である.エディトリアル