カレントテラピー 32-8 サンプル

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96 Current Therapy 2014 Vol.32 No.8810れらも勘案しなければならない.HEMSのコスト効率性についても各国でさまざまな研究が行われてきたが,運用法や地形の相違,コストの推定法などによって結果にばらつきが大きく,一般的な結論が得られるには至っていない5).米国のNTDBを用いた研究では,死亡の相対危険度が18%以上減少するとGEMSよりコストが削減されるため,軽症例の搬送を制限することが提言されている6).ドクターヘリは,無作為化比較試験を行うことが倫理的に困難なため厳密な評価は容易ではないが,これらの点を踏まえて,さらなる検証を行う必要がある.Ⅵ 今後の課題1 安全管理ドクターヘリでは,消防機関,運航クルーと医療クルー,基地病院など,複数の組織や職種が迅速に連携活動を行わねばならないため,各組織にまたがる安全管理体制が必要である.また,医療安全管理に加えて航空機の安全運航も重要課題である.HEMSの航空機事故率は,国や地域によって大きく異なるが,100,000飛行時間あたり0.04~2.12件の死亡事故が報告されており7),多くはヒューマンエラーによるものである.本邦のドクターヘリで死亡事故は発生していないが,今後も安全管理には十分留意しなければならない.2 相互支援体制ドクターヘリの配備数が増えたため,同一道府県内や隣県にヘリが配置されているところが多くなった.このため,道府県間あるいは同一道府県内でドクターヘリの相互支援体制を構築することにより,同時要請や多数傷病者発生事故,大規模災害時などの際に複数機体での対応が可能な状況になっている.すでに道府県間の協定が締結され,相互支援体制が整っている地域も多くなっているが,災害対策への応用も視野に入れて,さらに推進すべき重要課題と考えている.3 未導入地域の解消すでに多くの道府県にドクターヘリが導入されているが,いまだ全国をカバーしているわけではない.未導入地域では,臨時離着陸場や消防機関との連携システムなどドクターヘリの基盤が未整備であるため,災害時においてもドクターヘリを有効活用するのは難しく,道府県間の相互支援体制にも支障が生ずる.そのため,早期に未導入地域を解消して国民が等しく利益を享受できるようになることが望まれる.4 有効性の検証本邦のドクターヘリも,その有効性についてコスト効率性も含めて厳密に検証しなければならない.近年症例は急速に増加しており,特に外傷例は8,700名/年を超えているため,1~2年のコホート研究により,転帰に対する有効性は解析可能になったと思われる.同時にコスト効率性や有効性の高い症例の選択などに関しても検討するため,現在全国基地病院による多施設共同研究を準備している.非外因の各疾病に対する有効性については,症例数がやや少なく,信頼性の高い重症度評価指標も少ないことから,有効性を厳密に評価するには困難な面があるが,急性冠症候群や脳血管障害などの特に重要な疾病を中心に,外傷例と同様に多施設共同研究による評価を計画している.5 運航時間の拡大本邦のドクターヘリは天候の良い日中にのみ運航している.救急患者は24時間発生するため,すべてをカバーすることはできず,可能であれば夜間を含めた運航時間の拡大が望まれる.世界的には夜間も稼働しているHEMSは少なくないが,夜間運航には,①パイロットの暗順応,②夜間照明等のヘリポート整備,③時間帯による症例発生頻度の相違,④運航費用の増加などの問題があり,また,厳格な安全管理や騒音への対応も要求されるため,慎重に対応すべき課題と考えている.Ⅶ おわりにドクターヘリは,阪神淡路大震災から20年を経て全国に43機が配備され,わが国の標準的なヘリコプター広域救急医療システムに成長した.今後,残さ