カレントテラピー 32-8 サンプル

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Current Therapy 2014 Vol.32 No.8 93807リ搬送されたのは,発災当日は外傷患者1名,翌日も外傷1名,疾病5名にすぎなかったことから,ヘリコプターによる救急システムが検討されることになった.1996年,自治省総務庁(当時)は「ヘリコプターによる救急システムの整備・充実に向けた取り組みについて」をとりまとめ,翌1997年,厚生省(当時)「救急医療体制基本問題検討会」において,救急ヘリの体制整備に関する必要性が議論された.これらを受けて,1999年内閣官房に「ドクターヘリ調査検討委員会」が設置され,同年より1年半にわたって,厚生省「ドクターヘリ試行的事業」が実施された.同事業では,岡山県の川崎医科大学附属病院高度救命救急センターと神奈川県の東海大学医学部付属病院救命救急センターが実施主体となり,東海大学ではこの間485名を搬送した.試行的事業の結果,現場からの予想救急車搬送時間が8分を超える場合はドクターヘリによって初期治療の開始が早まり,55名の転帰が改善した可能性があると判定され,一定の有効性が実証された1).試行的事業の成果を踏まえ,2001年より厚生労働省「ドクターヘリ導入促進事業」による運航費用の補助が開始され,各地でドクターヘリの導入が始まった.さらに2007年には「ドクターヘリ特別措置法」(法律第103号)が成立し,翌年より総務省が特別地方交付税交付金として,ドクターヘリ運航費用の自治体負担分の50~80%を交付することになった.これで法律,費用両面での課題が解決され,その後は全国配備が急速に進み,2013年度の年間総出動件数は20,000件に達している(図1).また,2011年の東日本大震災では,被災地域内の基地病院4カ所に加え,全国14カ所の被災地外基地病院からもドクターヘリが出動して多くの活動が行われた.Ⅲ 本邦におけるドクターヘリの現状2014年4月の時点で,36道府県に45の基地病院が設置され,43機のドクターヘリが運航されている(図2).北海道など複数を導入している道府県もある.日本航空医療学会の全国集計では,2013年度のドクターヘリ年間総要請件数は26,173件,うち出動(離陸)したのは20,515件(78%)で,残り22%は悪天候などのため出動できなかった.出動したうち現場への出動は14,204件(69%),施設間搬送4,000件(19%)で,残り2,068件(10%)は出動後にキャンセルとなった.同期間にドクターヘリが診療を行った疾病別患者数を表に示す.診療した18,851例のおおむね半数は25,00020,00015,00010,0005,00001999 2000 2001 2002 2003 2004 2005 2006 2007 2008 2009 2010 2011 2012 2013(件)(年度)図1ドクターヘリ出動件数の経年推移(全国集計;日本航空医療学会)