カレントテラピー 32-8 サンプル

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Current Therapy 2014 Vol.32 No.8 69心肺停止783てしか有効ではない.これは観察研究の大きな弱点であり,エビデンスとしての位置づけは無作為比較試験よりも低い.調整変数と分析手法の選択によっては結果が異なる場合があり,観察研究の結果を解釈する際には分析方法を十分に吟味しなければならない.McQueenら11)が指摘するように,多くの観察研究において蘇生の持続時間(自己心拍再開のタイミング)が十分に考慮されていない.蘇生プロトコールの後半で使用されるアドレナリンは,初期治療に反応して早期に自己心拍再開する軽症例に対して投与される可能性は低い.一方,長時間の蘇生を必要とする重症例には投与される可能性が高い.したがって,非投与群に軽症例が,投与群に重症例が集積するという選択バイアスが生じる.このバイアスを考慮せずに比較を行えば,投与群の予後が不良となるのは当然である.アドレナリンの有害性を報告したスウェーデンと日本の観察研究では,それぞれ多重ロジスティック回帰モデルと傾向スコアによるマッチングを用いて共変量を調整している(傾向スコアとは,複数の共変量を統計モデルにより単一のスコアにまとめたもので,スコアの近い症例をマッチングすることにより,共変量の分布が2群で同等になる)4),7).しかし,スウェーデンの研究は自己心拍再開について考慮しておらず7),日本の研究は自己心拍再開の有無を変数として傾向スコア作成モデルに投入してはいるが,そのタイミングは考慮していない4).したがって,これらの分析方法では,上記の選択バイアスが十分に除去できていない可能性がある.もう一つ考慮すべき事項は,投与のタイミングである.心肺停止から投与までの時間が短いほど長期予後が良好であることが,日本の研究から報告されている12),13).また,心肺停止からアドレナリン投与までの経過時間が長い場合に,有害作用が有効性を上回り長期予後が悪化する可能性が,RCT(標準量に比べて高用量投与で長期予後不良)14)や動物実験(投与により心機能低下)15)により示されている.共変量に加えて,自己心拍再開のタイミング,投与のタイミング,さらに病院前投与の効果検討では病院到着のタイミング(病院到着後は“病院前”投与はあり得ない)を考慮する必要があるが,単一の統計モデルによりすべてを調整するのは非常に困難で0.1 1.0 10.0オッズ比(95%信頼区間)VF/VT1カ月生存未調整調整済神経機能予後良好(CPC1-2) 未調整調整済non-VF/VT1カ月生存未調整調整済神経機能予後良好(CPC1-2) 未調整調整済図1マッチング後の投与群と対照群の比較(ロジスティック回帰分析)初期波形でVF/VTとnon -VF/VT症例に層別化し,それぞれで傾向スコアを用いたリスクセット・マッチングを行い,「投与群」vs「非投与群」を比較した.1カ月生存と神経機能予後良好(CPC1-2)をエンドポイントとして,条件付きロジスティック回帰分析を行い,オッズ比と信頼区間を算出した.未調整オッズ比は,モデルに投与の有無のみを投入したもので,調整済みオッズ比は傾向スコア作成時に使用できなかった変数(心源性/非心源性,救急隊による蘇生開始から病着までの時間,バイスタンダーが家族/家族以外,蘇生開始から除細動までの時間)をモデルに投入したもの.オッズ比が1より大きい場合に,投与群が対照群に比べて予後が良好であることを示す.VF/VT:ventricular fibrillation or pulselessventricular tachycardia(心室細動/無脈性心室頻拍)CPC:Glasgow -Pittsburgh cerebral performancecategory(1:良好,2:中等度障害,3:高度障害,4:昏睡,5:死亡)〔Evaluation of pre - hospital administration ofadrenaline(epinephrine)by emergency medicalservices for patients with out of hospital cardiacarrest in Japan:controlled propensity matchedretrospective cohort study. Nakahara S, et al:BMJ347:f6829, 2013〕