カレントテラピー 32-8 サンプル

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44 Current Therapy 2014 Vol.32 No.8758ルである.そこで,ER型救急医が初期の診療と治療とを開始すれば,複数傷病の診療のプライオリティをつけて,専門医同士の話し合いを行うことができるようになる.したがって,今後の本邦における救急医療体制はER型救急医療体制を採用して推進せざるを得ない.ER型救急医療が米国型の救急医療体制とすれば,米国と本邦とでは医療制度が異なるものの,似通った問題を抱える可能性がある.米国における救急医療の最大の問題は,overcrowding,すなわち混雑である4).少数の救急医療機関に多くの患者が殺到する.この問題に対する有力な解決策は見出されていない.本邦でも,ER型救急医療体制によって救急患者の病院へのアクセスが改善されれば,さらに救急患者が増加することも考えられるので,救急外来の混雑は避けて通れない問題となる可能性がある.本邦では救急患者が増加している.国民は増加していないにも関わらず,また,有病率が大幅に増加していないにも関わらず救急患者が増加するのは,患者の受療行動が変化して,一般外来から救急外来へと患者のシフトが発生している可能性が高い7).また,在宅医療等の推進によって,一般外来への通院が困難な患者の病態悪化は救急患者として扱われている.このように,救急医療へのアクセス性の改善は社会構造,医療制度,および患者の受療行動の変化をきたし,救急医療にさらなる負荷を生む可能性を考慮しなければならない.ER型救急医療体制は救急医療のアクセス性を高め,効率的な救急医療を推進するために有用な体制だが,医療におけるその他の領域との効率的な役割分担を行う必要性に迫られるであろう.Ⅶ おわりにER型救急医療体制は本邦の救急医療体制の発展のなかで必然的に生じた.これが北米で行われている救急医療と親和性の高い医療体制となっている.特徴は,比較的少数の救急医が重症度や臓器別専門領域に関わらずにすべての救急患者を診療することにある.これは専門医間の役割分担による効率化を推進すると同時に,より多くの救急患者を診療できる体制でもある.そして,診療のみならず,教育や研究にも貢献できる体制である.本邦における「救急医療の危機」に対応するひとつのモデルである.参考文献1) 堀 進悟,太田祥一,大橋教良ほか:本邦におけるER型救急医療の実施状況.日救急医会誌 18:644-651, 20072) 山下雅知,明石勝也,太田 凡ほか:日本救急医学会救急科専門医指定施設におけるER型救急医療の実施状況.日救急医会誌 19:416-423, 20083) 鈴木 昌,堀 進悟,山下雅知ほか:日本救急医学会救急科専門医指定施設における初期研修プログラムとER型救急医療研修.日救急医会誌 20:871-881, 20094) 日比野誠恵,堀 進悟:米国救急医学の現状と本邦のER型救急医療.日救急医会誌 21:925-934, 20105) Hori S:Emergency medicine in Japan. Keio J Med 59:131-139, 20106) 丸茂裕知:わが国救急医療体制発展の歩み.日救急医会誌 11:311-322, 20007) 鈴木 昌,堀 進悟:救急搬送先病院の選定困難事案多発の原因についての検討.日救急医会誌 20:899-908, 20108) 鈴木 昌,堀 進悟,相川直樹:救急隊が行うprehospitaltriageの有用性と限界.日救急医会誌 13:429-437, 20029) 鈴木 昌,田島康介,本間康一郎ほか:ER型診療拡充に伴う患者数の変化の検討.日救急関東地方会誌 33:25-29, 2012