カレントテラピー 32-8 サンプル

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40 Current Therapy 2014 Vol.32 No.8754に伴って,救急医療研修の主流がER型救急医療に移行し,さらにER型救急医療を採用する病院が増加した(図2).近年は,ER型救急医療を採用する2次救急医療機関が救命救急センターの指定を受け,逆に既存の救命救急センターがER型救急医療を採用するなどしている4).このように,ER型救急医療は本邦の救急医学と救急医療の歴史的背景,社会的要請から必然的に生じたと言える.そしてこの体制は,医療制度の異なる米国における救急医学のスタイルとの親和性が高い4).Ⅲ 現状の救急診療体制とそれに関わる問題現在の本邦の救急医療は初期から3次に至る救急医療機関で構成される(図1).その救急医療機関の診療体制は3種類に大別される.すなわち,①救命救急型,②各科相乗り型,③ER型である4).救命救急型は前述のとおり,救急医が,救急隊員によって重症と判断された少数の患者を対象として救命治療を行うモデルである.換言すれば,医療資源を重症患者に集中させるモデルである.ここでは,多くの場合,救急部門が外来診療から入院診療までを一貫して担うので,内科や外科などの既存診療科と同様に重症患者に特化した専門分野とされている.しかし,ここでの重症患者の占める割合は,すべての救急車搬送患者の1割以下にすぎないため,大多数の救急患者は救命救急センター以外で診療されていることになる.救急医が乏しい時代はこのモデルを採用して,医療資源を重症患者に集中させることは合理的だったと考えられる.では,救命救急型で診療されない患者はどこでどのように診療をされていたのか.そのほとんどは各科相乗り型で診療されていた(図3 A).各科相乗り看護師・研修医内 科外 科脳外科整形外科救急外来AB病 棟帰 宅救急患者救急患者救急車搬送Walk-in帰 宅内 科外 科脳外科救急外来病 棟救急車搬送Walk-inICU救急医(ER型)トリアージナース入院入院重症中等症中等症軽 症重症軽 症図3救急診療体制A:各科相乗り型救急診療体制救急患者は看護師や研修医が初期に対応して,その傷病に応じた専門医を呼ぶことによって患者の診療が行われる.すべての診療科が救急診療に参画するものの,責任をもって主体的に救急患者の診療を行うことができない.B:ER型救急診療体制救急外来に救急医が常駐して,すべての救急患者の診療を開始する.入院診療や専門的処置を要する場合には,各科専門医への診療依頼を行う.また,各科専門医の診療を必要としない帰宅可能患者は救急医が外来診療を完結させる.救急医が救急外来を主体的な診療の場として責任をもつことで,各科専門医との役割分担を行っている.