カレントテラピー 32-8 サンプル page 18/38
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カレントテラピー 32-8 サンプル
Current Therapy 2014 Vol.32 No.8 39753なった.一方,1980年代までは救急車搬送の法的対象が外傷患者であったため,救命救急センターは重症外傷患者に対する集中治療を担うことになった5),6).しかし,「重工業」や「交通戦争」といった言葉に代表されるような高度成長期を終えた1980年代は,社会構造の変化から,救急医療に対する需要に変化をもたらし,急病患者も法的な救急車搬送の対象に加えられるに至った5),6).そしてその後の人口構成の高齢化や市民意識の変化は,救急医療に対する質と量の両面からの需要の増大をまねき,少数の重症患者を集中的に診療する救命救急センター中心の救急医療体制の限界を露呈させた.これは,「救急医療崩壊」や「たらいまわし」と呼ばれる社会問題にまで発展した7).1980年代以降に救急医療の対象に加わった急病では,例えば胸痛を訴える急性心筋梗塞患者のように,歩行可能で一見軽症と判断されるような病態でも致死的疾患であることはまれではない.このため,内科的疾患の診療能力充実の必要性が論じられるようになった.また,救急患者の搬送先は,救急隊員によってトリアージをされて,搬送先が2次または3次救急医療機関へと選別されていたが,その有用性には限界も指摘されていた8).さらには,臓器別専門分化が高度になるにつれて,重症度や臓器別診療科にとらわれずに救急患者を診療することの合理性が論じられるようになった.これを受け,1990年前後からER型救急医療を行う病院が散見されるようになる.加えて,2000年代からは初期研修制度の変更救急患者重症中等症軽 症初期救急医療機関(軽症:帰宅可能患者)2次救急医療機関(中等症:入院適応患者)3次救急医療機関救命救急センター(重症:集中治療適応患者)救急車搬送Walk-in転院搬送転院搬送図1初期から3次に至る救急医療機関本邦では,救急医療機関は初期救急医療機関,2次救急医療機関,および3次救急医療機関(救命救急センター)に分類されており,それぞれの役割は受け入れ患者の重症度に応じている.これは,あくまでも救急医療機関の分類である.救急患者の重症度は診療以前には決定できないので,救急患者はどこを受診すればよいかを判断することができない.050100150200250~ 1979年~ 1989年~ 1999年 ~ 2004年~ 2010年施設数病床数=<250 =<500 =<750 =<1,000 >1,000図2日本救急医学会救急科専門医指定施設におけるER型救急医療採用状況施設の病床数別に,いつからER型救急医療体制を採用したかを表す.1990年代から徐々に増加し,2004年の初期臨床研修制度開始に伴って大幅に増加している.