カレントテラピー 32-8 サンプル

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Current Therapy 2014 Vol.32 No.8 19733測生存率(probability of survival:Ps)を示すものであり,現時点ではPTD を評価するための標準的な手法といえる(表1).米国外科学会外傷委員会はChampionを中心に,1982~1987年の間に北米139施設に搬送された80,544症例を統計学的に分析し,TRISS法を提唱した.基盤となったこの研究はMajor Trauma Outcome Studyと呼ばれ,TRISS法で導かれたPsが0.5%を超えているにも関わらず,死亡した症例をunexpected deathと定義し,そのなかから専門家がレビューすることによってPTDを決めている.TRISS法のPsは,解剖学的な重症度を示すinjury severity score(ISS),生理学的な重症度を示すrevised trauma score(RTS),および年齢の独立項目から構成される.統計学的な手法で客観的に生存率が予測でき,unexpected death率やPTD率が施設内あるいは多施設間で評価できるようになれば,自施設のベンチマークが可能となり,日本のトップ施設との相違を知ることで自施設の外傷診療の質を評価できる.また,経年的な成績改善が数字として現れてくれば,モチベーションが上がって診療の質向上に結びつく.このような理由で外傷重症度評価とPs算出は外傷診療の質向上に役立ち,JTDBの存在は大いなる意義があると考える.Ⅱ 日本外傷データバンクの現状JTDBは外傷症例をインターネットのWebサイトから登録することに特徴があるものの,登録項目が多いところに難点がある.入力項目は患者初期情報,病院前情報,転送情報,来院時病態,初療時の検査と処置,診断名と損傷重症度,入院退院情報にわたり,各項目における細目の合計は93に及ぶ.そのうち52細目が必須であり,医師のみならず,看護師,診療情報管理士等の努力によって症例登録がなされている.JTDBの参加登録施設は年々増えており,2014年5月現在,北海道から沖縄まで全国220を超える登録施設から,16万症例以上の情報が入力されている.JTDBの参加登録施設は,日本全国から登録された包括的情報もしくは自施設の臨床評価指標を,インターネットのWebサイトからon line analyticalprocessing(OLAP)機能によってリアルタイムに近い状態で知ることができる.また,自施設から入力したデータは自由にダウンロードすることができ,個々の施設のデータベースとして活用できる.さらに,JTDBでは和文および英文の年次報告を毎年公表しており,これらの年次報告2)はインターネットから誰でもダウンロードできる.Ⅲ 年次報告に示される本邦の外傷患者の特徴JTDBの年次報告は記述統計を示したものであるが,日本の救命救急センター等に収容される外傷患者の特徴がおおむね示されており,本邦の外傷診療に関する貴重な資料といえる.JTDB年次報告は2005年10月,第33回日本救急医学会総会・学術集会で初めて公表された.記述統計のまとめ方は,当時の米国におけるNational Trauma Data Bank(NTDB)のそれに準じた.その後,毎年1回の日本救急医学会総会Ps= 11+e-bb=b0+b1×RTS+b2×ISS+b3×年齢スコア(予測生存率)(生理学的重症度)(解剖学的重症度)定数RTS ISS 年齢スコアb0 b1 b2 b3鈍的外傷-0.4499 0.8085 -0.0835 -1.7430穿通性外傷-2.5355 0.9934 -0.0651 -1.1360AIS 90による係数表1TRISS法通常,Psが0.5を超えているにも関わらず,死亡した症例をunexpected deathとし,さらにpeer reviewの審査によってpreventable trauma death(PTD)か否かが決まる.〔参考文献1)より引用改変〕