カレントテラピー 32-8 サンプル

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18 Current Therapy 2014 Vol.32 No.8732Ⅰ 日本外傷データバンクの誕生とその意義外傷患者の統計情報は,警察庁事故統計,厚生労働省人口動態統計,あるいは総務省消防庁・救急救助の現況,または日本脳神経外傷学会が設立した頭部外傷データバンクからも得ることは可能である.しかしながら,外傷患者全体の診療情報が登録された全国規模の外傷データバンクは日本外傷データバンク(Japan Trauma Data Bank:JTDB)が本邦では唯一の存在といっても過言ではない.JTDBは日本外傷学会と日本救急医学会によって2003年10月に設立され,2004年1月から正式な運用が開始された.現在では日本外傷診療研究機構(Japan TraumaCare and Research:JTCR)がJTDBの管理・運営を行っているが,日本外傷学会のトラウマレジストリー検討委員会が実質的な企画・活動を担当している.設立の趣旨と目的は,日本全国における外傷治療の詳細な臨床データを収集し,診療の実態や標準的な治療成績を明らかにすることで外傷治療の質的な評価を可能にし,本邦の診療の質向上に貢献することである.重症の外傷患者を診るうえで最も大切なことは救える患者を確実に救命することであり,防ぎ得た外傷死(preventable trauma death:PTD)を発生させないことである.患者の病態重症度と緊急度を身体所見とバイタル・サインから判断し,タイムリーに救命処置をすることが肝要である.PTDを防ぐには病院前を含めて医療システムを改善することが求められ,そのためにはPTDの発生と頻度を客観的に分析する必要がある.1990年にChampionらが提唱したTRISS法1)は外傷症例の予後予測,すなわち予外傷データバンクの示すもの齋藤大蔵*日本外傷データバンク(Japan Trauma Data Bank:JTDB)は本邦を代表する外傷患者登録制度で,2003年10月に設立され,2004年1月から正式な運用が開始された.JTDBの設立の趣旨と目的は,日本全国における外傷治療の詳細な臨床データを収集し,診療の実態や標準的な治療成績を明らかにすることで外傷治療の質的な評価を可能にし,本邦の診療の質向上に貢献することである.防ぎ得た外傷死(preventable trauma death:PTD)の発生を最小にすることを目標に,外傷重症度評価や予測生存率算出に基づいて自施設の外傷診療の質が評価でき,経年的な成績改善が数字として現れてくれば,モチベーションが上がって診療の質向上に結びつく.また,英文および邦文の年次報告が毎年公表されており,本邦の外傷患者の特徴を記述統計データとして知ることができる.JTDBの洗浄データが参加登録施設に開示され,多くの外傷疫学研究が行われていることも本邦の外傷診療の質向上に一役を担っているものと考える.* 防衛医科大学校防衛医学研究センター外傷研究部門教授救急医療の現状と展望― セーフティネットを求めて