カレントテラピー 32-7 サンプル

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10 Current Therapy 2014 Vol.32 No.7626なく,その後に発症率が急激に増加する原因として閉経の関与が強く示唆されている.女性ホルモンであるエストロゲンには,血管平滑筋弛緩作用,脂質代謝改善作用,抗酸化作用,線溶系改善作用や内皮型一酸化窒素合成酵素誘導作用等の心血管に対する種々の保護的作用があるため,閉経前まではエストロゲンの作用により動脈硬化の進展が男性より遅く,閉経にてエストロゲンの産生が低下することによって動脈硬化が進展し,虚血性心疾患の発生頻度が増えると考えられている.わが国のガイドラインでは,女性における虚血性心疾患は女性ホルモンの影響が強く,閉経が重大なターニングポイントとなるため,閉経周辺期や閉経後における,これまで更年期障害の症状として見過ごされがちな動悸,胸痛,胸部圧迫感,脈の乱れなどの症状でも虚血性心疾患を念頭に置き,運動負荷心電図などのスクリーニング検査をするべきと提唱している6).急性心筋梗塞の急性期における臨床経過に関しても性差を認めており,急性心筋梗塞による病院に搬送される前の死亡率を調べた統計によると,急性期死亡率は女性のほうが男性より少ないと報告されている7).これは心筋梗塞発作時の迷走神経反射の亢進が女性で著しく,致死的心室性不整脈が少ないためと推察されている.一方,急性心筋梗塞でステント留置後患者の院内死亡率を調査したわが国の研究によれば,総死亡率は男性の5.2%と比較して,女性は9.4%と高率で,心臓死率も男性4.5%に対して,女性は6.5%と高率であったとしている8).これは再灌流後の心不全,心破裂の頻度が女性において高いことが影響していると考えられている.Ⅴ 虚血性心疾患の冠危険因子虚血性心疾患の冠危険因子として,高血圧症,耐糖能異常,脂質異常症,喫煙,年齢,家族歴などが挙げられ,これらの危険因子の重複により発症リスクが増大することが知られている.わが国では,食生活の欧米化により,耐糖能異常,脂質異常症などの危険因子が増加している.1 高血圧症高血圧症は,わが国では4,000万人の患者が推算され,正常高値血圧も含めると5,500万人という最も多い生活習慣病である.血圧が高いほど,脳卒中,心筋梗塞,心疾患,慢性腎臓病などの罹患率および死亡率が高くなり,男性では収縮期血圧が10mmHg上昇すると,冠動脈疾患罹患,死亡のリスクは約15%増加する9).循環器疾患基礎調査対象のコホート研究であるNational Integrated Project for ProspectiveObservation of Non-communicable Disease And itsTrends in the Aged(NIPPON DATA)によると,全循環器疾患死亡,脳卒中死亡,冠動脈疾患死亡のリスクも至適血圧レベルで最も低く,正常/正常高値レベルでもその2倍のリスクを示している10).同研究での1961~2010年の50年間で,収縮期血圧は60~69歳では平均で男性が19.0mmHg,女性が3025201510502005年2006年2007年2008年2009年2010年2011年2012年人/10万人急性心筋梗塞 男急性心筋梗塞 女その他の虚血性心疾患 男その他の虚血性心疾患 女図2虚血性心疾患の年齢調整死亡率〔「厚生労働省 2012年人口動態統計(確定数)の概況」より作図〕