カレントテラピー 32-7 サンプル page 6/32
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カレントテラピー 32-7 サンプル
Current Therapy 2014 Vol.32 No.7 9625ているものの,男性では明らかな経時的変化は認めなかったとしている.それぞれの研究で期間や地域,対象年齢などに違いがあるが,急性心筋梗塞の発症率は,増加はすれども減少はしていない.その原因としては,ライフスタイルの欧米化による脂質異常,糖尿病,肥満やメタボリックシンドロームの増加,そして高齢化社会による影響が考えられる.Ⅲ 虚血性心疾患の死亡率2012年の厚生労働省の人口動態調査によると,心臓病の死亡数は約20万人で,全死因の15.8%を占めており死亡原因の第二位である.主な死因別の死亡率(人口10万対)は,がん286.6人,心臓病157.9人,肺炎98.4人,脳卒中96.5人,老衰48.2人となっており,心臓病は1994 年,1995年に新しい死亡診断書(死体検案書)における「死亡原因記入欄には,疾患の終末期の状態としての心不全,呼吸不全等は書かないでください」という注意書きの事前周知の影響で一時的に低下したものの,1985 年に第二位となってからも上昇を続け,今もなお,がんに次ぐ主な死因となっている.そのなかでも冠動脈疾患(急性心筋梗塞とその他の虚血性心疾患の合計)の死亡率は61.6人であり,心臓病死亡の約40%で,最大の割合を占めている.しかし,図1に示すように冠動脈疾患による死亡率は2005年以降横ばいであり,特に急性心筋梗塞に関しては徐々に減少傾向にある.その理由としては,経皮的冠動脈形成術などの医療技術の進歩や救急体制の整備によって急性心筋梗塞の死亡率が低下したことなどが挙げられる.一方,「その他の虚血性心疾患」は徐々に増加している.「その他の虚血性心疾患」には死因基本分類コードの「狭心症」,「急性心筋梗塞の続発合併症」,「その他の急性虚血性心疾患(心筋梗塞に至らなかった冠動脈血栓症など)」や「慢性虚血性心疾患(陳旧性心筋梗塞など)」が含まれているため,一概に増加している理由を挙げることはできないが,人口の高齢化も影響していると思われる.そこで年齢構成の差を取り除いて比較した年齢調整死亡率では,冠動脈疾患の死因の年次推移は図2のように男女ともに急性心筋梗塞による死亡率は低下し,その他の急性虚血性心疾患では不変である.Ⅳ 虚血性心疾患の性差米国では,女性の心血管疾患の頻度が40歳代前半までは男性と比べて低い水準にあるが,40歳代後半から50歳代にかけて増加し,60歳代後半では男性に匹敵するレベルに達することがFramingham研究によって報告されている5).わが国でもTakashima AMIRegistryで,急性心筋梗塞の発症率が男性では40~50歳頃から上昇するのに対し,女性では50~60歳頃と約10年遅れて上昇すると報告されている1).この40~50歳代までの女性においては心疾患の発生が少020406080100120140160180人/10万人2005年2006年2007年2008年2009年2010年2011年2012年心疾患(高血圧性を除く)急性心筋梗塞その他の虚血性心疾患冠動脈疾患合計図1心疾患の死亡率〔「厚生労働省 2012年人口動態統計(確定数)の概況」より作図〕