カレントテラピー 32-7 サンプル

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Current Therapy 2014 Vol.32 No.7 7623虚血性心疾患― 診断と治療の最前線―企画信州大学医学部循環器内科学教授池田宇一わが国では生活様式の欧米化と人口の高齢化により,動脈硬化性疾患が増えている.一方,この領域の医療の進歩にも目を見張るものがある.最近発表された英国の調査では,急性期治療や二次予防の進歩により,この10年間で虚血性心疾患による死亡率は半減している.一方,糖尿病患者の増加は死亡率減少のブレーキとなっている1).狭心症の診断は,以前から問診と負荷検査が中心であり,現在でもその重要性に変わりはない.最近では画像検査も進歩し,診断精度はさらに向上してきている.冠動脈CT検査はその代表であり,陰性的中率がきわめて高く有用な検査であるが,石灰化病変に弱く,また被曝量も考慮する必要性がある.狭心症の治療においては,経皮的冠動脈インターベンション(percutaneous coronary intervention:PCI)が欠かせない手技となっている.しかし,COURAGE試験においては,安定狭心症患者に対して至適薬物療法に加えPCIを行うことの予後改善効果は証明されなかった.この試験は必ずしもPCIの予後改善や心筋梗塞再発予防の効果を否定したものではなく,至適薬物療法の重要性が再認識された試験であるといえる.PCIについては,2004年に薬剤溶出性ステント(drug eluting stent:DES)が登場し,従来のベアメタルステントの弱点であった再狭窄は劇的に減少した.一方で遅発性ステント血栓症という安全性への懸念が取り沙汰され,ステント血栓症予防のための抗血小板薬の使い方について議論が続いている.リスクとベネフィットのバランスを考慮すると,ほとんどのDES症例は6カ月または12カ月間の2剤併用抗血小板療法で十分と考えられるが,一部のハイリスク症例,動脈硬化の高度な症例では終生の2剤併用が必要と思われる.一方,わが国では心房細動患者数が100万人以上といわれ,抗血小板薬2剤にワルファリンなどの抗凝固薬を併用する例が増加している.3剤併用は特に出血リスクが高まるため,心房細動を合併したステント留置患者の至適抗血栓療法が議論の的となっている.本号ではこれら議論中の問題も含め,虚血性心疾患の診断と治療の最前線について専門家にわかりやすく解説していただいた.皆様の日常診療のお役に立てれば幸いである.エディトリアル参考文献1)Hotchkiss JW, Davies CA, Dundas R:Explaining trends in Scottish coronary heart disease mortality between 2000 and 2010 usingIMPACTSEC model:retrospective analysis using routine data. BMJ 348:g1088, 2014