カレントテラピー 32-7 サンプル

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76 Current Therapy 2014 Vol.32 No.7692冠攣縮性狭心症国立循環器病研究センター病院心臓血管内科部門 本田怜史国立循環器病研究センター病院心臓血管内科部門長 安田 聡冠攣縮とは,心臓の表面を走行する比較的太い冠動脈が一過性に異常に収縮した状態と定義されている.冠攣縮の正確な原因はわかっていないが,血管内皮機能障害,自律神経の影響などが考えられている.冠攣縮を原因とする狭心症=冠攣縮性狭心症は日本人に多いことから,遺伝的な要素も原因のひとつと考えられている.冠攣縮は夜間から早朝にかけての安静時に起こりやすく,ニトログリセリンにより速やかに胸痛が消失するのが特徴である.労作時にも発作を認めることがあるが,早朝に起こりやすく,午後からは激しい運動でも誘発されないというように,運動耐容能に日内変動を認める.冠攣縮性狭心症の診断は上記の特徴的な症状に伴って,心電図やホルター心電図での虚血性ST変化が認められれば確定診断としてよい.また心電図で虚血性ST変化がとらえられないが,症状から冠攣縮性狭心症が疑われる例では過換気寒冷負荷試験,運動負荷検査やエルゴノビン,アセチルコリンによる薬物誘発検査を考慮する.冠攣縮性狭心症の予後は一般的に良好であるが,急性心筋梗塞や突然死の原因となる場合もある.発作の予防としては危険因子の是正と薬物療法が行われる.喫煙は冠攣縮の最大の危険因子であり,禁煙指導は非常に重要である.また,アルコール摂取制限やストレス回避も冠攣縮の予防に推奨される.薬物療法としてはCa拮抗薬がfirst choiceである.Ca拮抗薬は種類に関わらず,総じて有効であるとされているが,特にジヒドロピリジン系の有効性が高いとの報告がある.しかし,Ca拮抗薬単剤で発作のコントロールが困難な例には硝酸薬やニコランジルの併用が行われる.一方,β遮断薬は冠動脈病変が存在する例で使用される場合があるが,非選択的なβ遮断薬は冠攣縮を増悪させる恐れがあるため,冠攣縮患者に用いる場合には長時間型のCa 拮抗薬を必ず併用することが推奨されている.発作時には硝酸薬の投与が非常に有効であり,舌下,スプレー噴霧で投与する.多施設研究によると,日本人では狭心症の約40%が冠攣縮性であると報告されており,冠攣縮性狭心症は虚血性心疾患の日常診療で出会うcommon diseaseのひとつである.特徴的な症状に注意し,適切な診断・管理を心がけたい.虚血性心疾患― 診断と治療の最前線