カレントテラピー 32-7 サンプル

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48 Current Therapy 2014 Vol.32 No.7664Ⅰ はじめに急性冠症候群(acute coronary syndrome:ACS)は,冠動脈プラークの破綻とそれに続く急激な血栓形成を基盤として急性心筋虚血を呈する症候群であり,不安定狭心症,心筋梗塞(ST上昇型,非ST上昇型)および心臓突然死の一部を包括する疾患概念である1),2).これらはいずれも直接生命にかかわる重症救急疾患であり,早期診断と適切な対応が必要とされる.初期対応時に病態評価を行い,それに応じた治療方針を考慮することが重要であるが,さまざまな病態,重症度の患者が含まれるため,その対応には慎重を要する.ST上昇型急性心筋梗塞のように発症から再灌流までの時間目標として120分という非常に短い時間が掲げられており3),初診時に即座に診断を必要とする病態のものから,病態が経時的に変化し不安定であるため,時間を追って繰り返し病態評価を行い,それに対し柔軟かつ速やかな方向修正を行わねばならないケースまで多様な病態を呈する.本稿では,これらACS患者の初期対応,診断,リスク評価,初期治療など主に血行再建に至るまでの対応について今一度基本から再確認したいと考える.Ⅱ ACSの診断ACSの診断の基本は,まずACSを疑うということである.ACSにはさまざまな病態が含まれており,持続する胸痛とST上昇を伴ったST上昇型急性心筋梗塞は循環器専門医でなくとも診断は容易である.しかしACSには受診時には全く症状がなく,明らかな心電図変化も認めない不安定狭心症が含まれており循環器専門医でも判断に迷うことはしばしば経験急性冠症候群に対する初期対応関  敦*1・高山守正*2急性冠症候群(acute coronary syndrome:ACS)は不安定狭心症,心筋梗塞および心臓突然死の一部を包括する疾患概念であり,いずれも適切な早期診断,治療を必要とする重症救急疾患である.ACSの初期対応には,診断,リスク評価,治療方針決定が同時進行で遅滞なく速やかに行われることが重要である.また初期の評価から病態,重症度が変化することもACSのひとつの大きな特徴であり,これに即座に対応し柔軟に治療方針を修正していくことも必要とされる.ACS治療の根幹は心筋壊死を生じさせない,あるいは壊死心筋量を最小限に食い止め,急性期死亡率の改善,心機能維持にある.そして,これらは慢性期の心不全の予防にもつながっていく.特にST上昇型急性心筋梗塞については,できるだけ早期に再灌流を行うことの重要性はすでに確立されており,早期再灌流につながるべく初期対応が重要となる.*1 榊原記念病院循環器内科副部長*2 榊原記念病院循環器内科部長・副院長虚血性心疾患― 診断と治療の最前線