カレントテラピー 32-6 サンプル

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Current Therapy 2014 Vol.32 No.6 71577Ⅰ はじめに現在20種類の抗うつ薬がわが国で使用されている.初期には化学構造式から三環系抗うつ薬,四環系抗うつ薬,などのように分類されていたが,1999年以降に発売された7種類の抗うつ薬については,降圧薬などと同様に作用機序による抗うつ薬の分類が採用されている.作用機序による分類のほうが薬物選択,薬物変更の際に有用な情報を提供してくれるので合理的といえる.1999年以降に本邦に導入された新規抗うつ薬は,選択的セロトニン再取り込み阻害薬(selective serotonin reuptake inhibitor:SSRI)4種類,セロトニン・ノルアドレナリン再取り込み阻害薬(serotonin-noradrenaline reuptake inhibitor:SNRI)2種類,ノルアドレナリン作動性・特異的セロトニン作動性抗うつ薬(noradrenergic and specificserotonergic antidepressant:NaSSA)1種類である.SSRIは脳内で細胞外セロトニン濃度を増加させるが,SNRIとNaSSAは細胞外セロトニン濃度のみならず,細胞外ノルアドレナリンとドパミン(ただし前頭葉でのみ)濃度も増加させる1),2).したがって,SSRIは単一作用(single action),SNRIとNaSSAは二重作用(dual action)の抗うつ薬ともよばれる.本稿では,これらの新規抗うつ薬の薬理作用,臨床効果,副作用の特徴と使い分けについて紹介する.SSRI, SNRI, NaSSAの特徴とその使い分け井上 猛** 北海道大学大学院医学研究科神経病態学講座精神医学分野准教授うつ病診療―入り口から出口まで1999年以降本邦の臨床に導入された抗うつ薬である選択的セロトニン再取り込み阻害薬(selectiveserotonin reuptake inhibitor:SSRI),セロトニン・ノルアドレナリン再取り込み阻害薬(serotonin-noradrenaline reuptake inhibitor:SNRI),ノルアドレナリン作動性・特異的セロトニン作動性抗うつ薬(noradrenergic and specific serotonergic antidepressant:NaSSA)は抗コリン作用,抗α1アドレナリン作用がないため,従来の三環系・四環系抗うつ薬に比べて副作用が大幅に軽減され,高齢者にも安全に使えるようになり,今や国内外でうつ病治療の第一選択となっている.しかし,これらの新規抗うつ薬は効果の面では従来の三環系抗うつ薬よりも優れているとはいえない.SSRI,SNRI,NaSSAあわせて7種類の抗うつ薬間の副作用の相違点は明らかであるが,抗うつ効果の相違点はまだ十分に明らかではない.SSRIはうつ病以外に不安障害への保険適用も有するため,不安障害を合併するうつ病ではSSRIは第一選択となる.不安障害を合併する場合以外は,SSRI, SNRI, NaSSAの使い分けは主として副作用の観点から行われる.a b s t r a c t