カレントテラピー 32-6 サンプル

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Current Therapy 2014 Vol.32 No.6 51557性不眠(精神生理性不眠,原発性不眠)として残遺することが少なくない.病初期における不眠の診断と積極的な治療介入が結果的に慢性不眠やうつ病の再発リスクを防ぐことにつながる.Ⅲ うつ病の不眠は難治性であるうつ病患者の不眠症状は一般的に強度であり難治性である3)~7).治療経過中に慢性不眠に陥ると睡眠薬をなかなか手放せなくなるケースが少なくない.先述のとおり,「うつ病の不眠は精神症状のひとつである」「うつ病が治れば不眠も改善するだろう」という考えは誤りである.従来は不眠はうつ病の単なる一症状であると考えられてきた.実際,うつ病の発症と同時に出現し,うつ病の治癒とともに自然に消褪してゆく不眠もある.このような不眠はうつ症状のひとつと考えてよいだろう.ただし,いったん慢性不眠(1カ月以上持続する不眠,治療に抵抗して持続する不眠)に陥ると単なる精神症状ではなく併存症となって高率に残遺する8).すなわち不眠症が一人歩きを始めているため,たとえ精神症状が改善しても平行して不眠が消失することはあまり期待できない.その意味では残遺症状(残遺不眠)という呼び方自体が病態を正しく反映していない.うつ病の残遺不眠を「いずれは治る」と対処が後手に回るのは睡眠薬の休薬を目指すうえからも,うつ病診療のうえからも損である.例えばうつ病の不眠に対する薬物療法や認知行動療法を行うことでうつ病の改善も促進されることが知られている9)~12).Ⅳ うつ病に伴う不眠の頻度うつ病では抑うつ気分や興味(喜び)の喪失といった中核症状に加えて,不眠をはじめとして,食欲不振や倦怠感などさまざまな精神身体徴候が認められる.なかでも不眠はうつ病患者で最も高率に認められる症状のひとつであり,一般的にうつ病患者の約80%に不眠が認められる.逆に,不眠の原因のなかでもうつ病は最も重要なもののひとつである.米国の調査では不眠症患者の35?40%が何らかの精神疾患を合併し,その20?50%がうつ病であったとされる13),14).また不眠は自覚しやすい症状,相談しやすい症状であることから,不眠を愁訴として診療機関を受診するうつ病患者も少なくない.実際,不眠を訴える患者を調査すると実はうつ病を合併していたという患者が少なくない.Ⅴ うつ病のリスク要因としての不眠数多くのコホート研究により慢性不眠症がうつ病の発症リスクを高める,もしくはうつ病性不眠がうつうつ病リスクとしての不眠厄介な残遺不眠再燃・再発リスクとしての不眠正常気分発症徴候症候群治療反応寛解回復再燃再発急性期治療持続治療維持治療(6-12週) (16-20週) (1年-)重症度QOLを障害する不眠1234図1うつ病の治療経過中に遭遇する代表的な不眠問題