カレントテラピー 32-5 サンプル

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8 Current Therapy 2014 Vol.32 No.5422Ⅰ 2010 ACR/EULAR新分類基準までの背景新たな治療薬の開発や,さまざまな臨床研究により,早期からの治療介入が関節リウマチ(rheumatoidarthritis:RA)患者の関節破壊を予防し,機能的予後を改善させるという知見が蓄積されてきた.そのようななか,長らく使われてきた1987年米国リウマチ学会(ACR)のRA分類基準(以下,旧分類基準)は平均罹病期間およそ8年の患者を対象としたものであり1),早期治療介入の恩恵を最も受けるべき早期RAを同定するには感度が十分ではなく,適切な基準とは言えなくなっていた.そもそもこの旧分類基準の項目には骨びらんの所見や長期罹患の結果として起こるリウマトイド結節の有無が含まれており,早期治療介入が重要視される今日のRA診療にはそぐわない.このように早期RAに適した分類基準がないという状況では,早期RAを対象とした臨床試験・研究の実施や比較が困難であった.新分類基準作成の目的はこのような問題を解決するため,つまり,早期RAを適切に分類する基準を作成し,臨床試験・研究を促進すること,そして研究間や施設間での比較を容易にすることであった.新分類基準が具体的に目指したのは,新たに発症した滑膜炎を有する患者において,「持続性および/または骨びらんを形成するリスクの高い滑膜炎」の症例をRAと分類する基準である2).この「持続性および/または骨びらんを形成するリスクの高い滑膜炎」が現時点で「関節リウマチ」ととらえられる疾患概念であり,多くの場合メトトレキサート(MTX)をはじめとした疾患修飾性抗リウマチ薬(diseasemodifying antirheumatic drugs:DMARDs)を開始する基準でもある.2010 ACR/EULAR新分類基準平野史生*1・針谷正祥*2早期の治療介入により関節リウマチ(rheumatoid arthritis:RA)の構造的予後が改善するという知見が蓄積され,早期診断がますます重要となっている.1987年米国リウマチ学会(ACR)より発表されたRA分類基準は罹病期間の比較的長い患者を対象にしたものであり,早期RAを対象にした研究に用いるには適切ではなかった.この点を踏まえ,2010年米国リウマチ学会/欧州リウマチ学会議(ACR/EULAR)分類基準は「持続性および/または骨びらんを形成するリスクの高い滑膜炎」を適切に同定することを目的に,早期関節炎コホートにおけるデータと専門家のコンセンサスに基づいて作成された.系統的レビューによる検討では新分類基準は1987年の旧基準と比較し,RAの分類に関しては感度が高く,早期関節炎をより適切に分類しているものと考えられる.今後は長期的な予後を踏まえた検討が望まれる.*1 東京医科歯科大学大学院医歯学総合研究科薬害監視学講座*2 東京医科歯科大学大学院医歯学総合研究科薬害監視学講座教授関節リウマチ―診断と治療の進歩