カレントテラピー 32-5 サンプル

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Current Therapy 2014 Vol.32 No.5 71485関節リウマチに関するゲノムワイド関連解析の最新知見東京大学医学部アレルギー・リウマチ内科教授 山本一彦ヒト全ゲノムの解読,マイクロアレイ上での遺伝子多型のタイピング技術などの進展に伴い,2007年以降,ゲノムワイド関連解析(genomewide association study:GWAS)が多く報告され,関節リウマチ(rheumatoid arthritis:RA)を含めた自己免疫疾患をはじめ多くの頻度の高い疾患の関連遺伝子に関する報告が急増している.この手法は,染色体に分布する遺伝子多型を数十万~百万種類調べ,その頻度を患者と健常人で比較するというものであり,なかでも一塩基多型(single nucleotidepolymorphism:SNP)が解析多型の中心である.いくつかの遺伝子多型は,アミノ酸変異を伴う質的に異なる蛋白分子の生成に関与するが,その他多くの疾患関連遺伝子多型は,遺伝子の発現量に関与するExpressionquantitative trait loci(eQTLs)と言われるもので,このような遺伝子発現の違いの積み重ねが疾患の発症に関連していると考えられる.今回,Okadaらは,これまで行われたRAに関係するGWASデータを統合し,特にアジア人と欧米人の集団を中心にRA患者3万人とコントロール7万人を解析した(Okada Y, etal:Nature 506:376, 2014).その結果42領域が新たにRAに関連することがわかり,今までに報告されたものを合わせて全体で101の遺伝子領域がRAの疾患関連遺伝子領域であることが判明した.さらにこの領域内の遺伝子と多様な生物学的データベースの網羅的な照合を行い,関連遺伝子の一部が原発性免疫不全や白血病の関連遺伝子と共通していることを見出した.これらの遺伝子が,免疫的機能またはリンパ球の増殖に関与していることを考えると理解できる.さらにRAの疾患関連遺伝子と制御性T細胞の遺伝子発現を制御している領域とが重複する率が高いこと,多くのサイトカインシグナルがRAの発症に関与していることなども見出した.そして,創薬データベースに登録されている種々の疾患における治療薬のターゲット遺伝子との関係を調べたところ,RAの疾患関連遺伝子が蛋白質間相互作用のネットワークを介して,すでに使われているRAの治療薬の標的遺伝子と関係していることを見出した.また,他の疾患に対する既存の治療薬のなかには,RAの関連遺伝子を標的としているものが存在することも見出した.これらの発見はGWASを用いた新たなゲノム創薬の可能性を示すものである.関節リウマチ―診断と治療の進歩