カレントテラピー 32-4 サンプル

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Current Therapy 2014 Vol.32 No.4 11糖尿病の病態Update32710歳未満まではわずかで,後2g程度で一定となる.β細胞の動態をみるためにはβ細胞死や再生の状態を検出して,β細胞のturnoverをみる必要がある.成人膵でのβ細胞のアポトーシス検出の困難さは,その数がきわめて少ないこと,マクロファージに速やかに消去されること,細胞死がアポトーシス以外の原因によることなどで説明される.一方,再生(複製)細胞の検出については多くの方法があるが,現在Ki67染色による検出法が最も再現性のよいものとして広く用いられている.この方法によると,生後10歳までは2~3%程度を示すが,いったん成人した場合,0.05~0.3%程度で低い状態で推移する.われわれの観察では,高齢者あるいは加齢によるβ細胞の減少はわずかにしかみられない.したがって,糖尿病でみられるβ細胞の減少は糖尿病での特異的な過程を示すものと考えられる.このように,生理的な成長,加齢の過程でヒトβ細胞の細胞死,複製はきわめて緩徐にかつ低いレベルで進展している(図3).しかしながら,肥満,妊娠,消化管切除など,なんらかの刺激が加わった場合,β細胞はその可塑性を示し再生能の亢進,あるいは早期死などの変化を示すことになる.若年者と高齢者ではβ細胞の性状の違いもあることが知られている.われわれの検討では,β細胞の再生・分化能に関与する転写因子としてPDX-1は,若年者で高発現,10歳以降低発現を示した.一方,細胞回転抑制因子としてのp16は逆に10歳未満で低発現,10歳以降で高発現を示した.これに対し,酸化ストレスDNA障害の指標であるγH2AXは60歳以降の高齢者で高い発現を示した(図4).このことから,加齢により酸化ストレス障害などからβ細胞が脆弱化し脱落しやすい状況となるものと推察される.Ⅲ β細胞の再生の機序β細胞の再生には,膵島内の未分化な細胞から分化するのか,既存のβ細胞から生じるのか,膵導管上皮の前駆細胞由来なのか,あるいは,外分泌細胞からの分化転換transdifferentiationなのか,いくつ5(%)膵島容積432105(%)β細胞容積432105(g)膵島容量(歳) (歳)年齢0~ 10~ 20~ 30~ 40~ 50~ 60~ 70~ 0~ 10~ 20~ 30~ 40~ 50~ 60~ 70~0~ 10~ 20~ 30~ 40~ 50~ 60~ 70~ 0~ 10~ 20~ 30~ 40~ 50~ 60~ 70~432105(g)β細胞容量43210図2ヒト膵島およびβ細胞容積と容量の成長と加齢による変化膵島容積は若年期に大きいが10歳台以降ほぼ一定で,加齢とともにわずかに減少していく.β細胞容積は生後からゆっくりとその割合を減少させていくが70歳台となりはじめて有意の減少を示す.これに対し,膵島容量,β細胞容量は若年で膵外分泌が未発達のため少ない.成長に伴い外分泌が発達し,それらの容量は一定となる.β細胞容量に対する加齢の影響は少ない.〔参考文献8)より引用改変〕