カレントテラピー 32-4 サンプル page 20/30
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カレントテラピー 32-4 サンプル
70 Current Therapy 2014 Vol.32 No.4386を取り込む役割を担っている.一方,腎臓では,近位尿細管のS1セグメントにおいて,低親和性で高輸送能のSGLT2が約90%のグルコース再吸収を行い,残り10%をS2/S3セグメントにおいて,高親和性,低輸送能のSGLT1が吸収している(図1).つまり,グルコース濃度の高い近位尿細管近位部で,エネルギー消費の少ないSGLT2によりグルコースの再吸収が行われ,残った少量のグルコースを近位尿細管遠位部で,エネルギーを余分に消費しながらも高親和性のSGLT1により完全に再吸収されるといった効率的な2段階吸収のシステムが成り立っている2).2 SGLT2阻害薬の開発SGLT2の遺伝子変異による機能低下により,腎臓におけるグルコース再吸収量が低下し,正常血糖でも尿糖を認め,腎性糖尿が発生することが明らかとなっている.このことは,SGLT2がグルコース再吸収に強く関与していることを示唆している.また,2型糖尿病患者では,尿中の尿細管上皮細胞におけるSGLT2mRNA発現が有意に亢進していることが報告されている3).このように,糖尿病による高血糖状態では,腎近位尿細管上皮細胞におけるSGLT2発現が亢進し,その結果グルコース再吸収が亢進していることが考えられる.さらにSGLT2を特異的に阻害することで腎尿細管からのグルコース再吸収を阻害し,尿糖排泄を増加することにより,血糖値を改善する作用が期待された.SGLT阻害薬の原型は,1800年代にリンゴの木から発見されたフロリジンである.フロリジンは種々の2型糖尿病モデル動物において,耐糖能の改善を認めることが報告されていた4).しかし,フロリジンはSGLT2だけでなくSGLT1も阻害すること,また経口投与では生物学的利用能が低いことなどから,薬剤としての開発の方向へは向かわなかった.その後,フロリジンの構造を改良し,腸管での吸収がよく,SGLT2への選択性を増加させたSGLT2特異的阻害薬が数多く開発され,既存の経口糖尿病薬とは全く異なる新しいタイプの糖尿病治療薬として期待されている.3 SGLT2阻害薬の臨床効果と副作用現在,国内では第Ⅲ相試験が行われたSGLT2阻害薬6成分(図2)は,すべて製造販売承認が申請され,イプラグリフロジンは2014年1月に承認がおりた.Dapagliflozinは,世界で初めて2型糖尿病治療薬として承認を取得したSGLT2阻害薬であり,すでに欧州やオーストラリアなどで承認されていたが,2014年1月,米国においても初のSGLT2阻害薬として承認された.Dapagliflozinは,2型糖尿病患者を対象とした第Ⅲ相試験において,グリメピリド投与中の患者にdapagliflozin(1日2.5mg, 5mg, 10mg)を追加併用した群は,プラセボ追加群(対照群)と比較して,24週時点でHbA1c値は対照群で-0.13%であったのに対して,dapagliflozin 2.5mg, 5mg,10mg併用群でそれぞれ-0.58%, -0.63%, -0.82%と有意に低下させた5).その他,インスリン,メト尿糖なしグルコース集合管SGLT1SGLT2S1セグメントS2/S3セグメント~90%再吸収~10%再吸収図1腎臓におけるグルコース再吸収機構〔参考文献2)より引用改変〕