カレントテラピー 32-4 サンプル

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カレントテラピー 32-4 サンプル

Current Therapy 2014 Vol.32 No.4 41357容体(Gタンパク質共役受容体:G protein coupledreceptor:GPCR)である.GIPとGLP -1がβ細胞上のGIP受容体またはGLP -1受容体に結合すると,Gs蛋白質を介してアデニル酸シクラーゼが活性化し,細胞内cAMPを上昇させる.この細胞内cAMPの上昇により,protein kinase A(PKA)やexchangeprotein directly activated by cAMP 2(Epac2)を活性化させ,細胞内カルシウムが増加した際にインスリン分泌の開口放出を増加させてインスリンの分泌を促進する(図1)3).インクレチンによる経路は,グルコース代謝によるアデノシン三リン酸(ATP)産生を介したATP感受性カリウムイオンチャネル閉鎖に伴うインスリン分泌作用(惹起経路)とは異なる作用である.またこの経路は,グルコース依存性に作用することが知られており(増幅経路),血糖が低い状態では作用しない.しかし最近では,Epac2が,活性酸素種(ROS)を介してATP産生に関与すること4)やEpac2自体がスルホニル尿素(SU)受容体に作用すること5)も明らかになっており,インスリン分泌において両経路がβ細胞内で密接に関与することが示唆される.GLP-1は,膵β細胞からのインスリン分泌促進作用ばかりでなく,膵α細胞に対してグルカゴン分泌を抑制する作用を有している6).GLP -1のグルカゴン分泌抑制については,α細胞にGLP-1受容体が存在し,直接的にグルカゴン分泌を抑制することやソマトスタチンを介した間接作用が報告されているが,いまだ不明である.一方,GIPは膵α細胞のGIP受容体に作用してグルカゴン分泌を促進することが報告されている7).2型糖尿病患者は,インスリン分泌が低下することに加えて不適切なグルカゴン分泌であるため,肝臓における糖取り込みの低下と糖放出の増加により高血糖をきたす.DPP -4阻害薬は活性型GLP -1濃度の増加を,GLP -1受容体作動薬はGLP -1受容体への刺激を介してグルカゴン分泌を抑制する8).つまりインクレチン関連薬は,インスリン分泌を促進するのみならず,グルカゴン分泌抑制を介した肝臓や筋肉でのインスリン感受性を高めることで血糖を改善させる.従来の糖尿病治療薬はインスリン分泌促進またはインスリン抵抗性改善のどちらかを主な作用として有しているが,インクレチン関連薬はインスリン分泌促進作用とインスリン抵抗性改善作用を併せもつ薬剤と考えられる.実際,インクレチン関連薬の内服によって従来の糖尿病治SUR1ブドウ糖ATPADPインスリン分泌電位依存性カルシウムチャネルcAMPATP栄養素GIPK細胞L細胞脱分極腸管増幅経路PKAEpac2GIP受容体GLP-1DPP-4DPP-4阻害薬GLP-1受容体作動薬GLP-1受容体膵β細胞アデニル酸シクラーゼATP感受性カリウムチャネルK+ Ca2+ミトコンドリア惹起経路[Ca2+]i 図1膵β細胞におけるインスリン分泌とインクレチンを介したcAMPシグナルSU薬はグルコース代謝によるインスリン分泌の経路(惹起経路)を介してインスリン分泌を促進するのに対して,インクレチンはcAMPシグナルを介してインスリン分泌を促進する(増幅経路).〔参考文献3)より引用改変〕