カレントテラピー32-3 サンプル

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Current Therapy 2014 Vol.32 No.3 7209家庭血圧― これからの高血圧個別治療へ―企画自治医科大学内科学講座循環器内科学主任教授苅尾七臣これまですべての高血圧研究のエビデンスは,診察室血圧(office BP)に比較して,診察室外血圧(out of office BP)のほうがより正確に臓器障害や心血管イベントのリスクを予測することを示している.さらに,近年,国内外のすべての高血圧治療ガイドラインにおいても,改定されるたびに,診察室血圧よりも診察室外血圧を,より重要視することが明記されてきている.つまり,これまでの最も確かなエビデンスに基づく,最も有効かつすべての高血圧患者に実施可能な高血圧治療が,「家庭血圧に基づく高血圧診療」である.診察室外血圧の評価法には,家庭血圧測定(home BP monitoring:HBPM)と24時間自由行動下血圧測定(ambulatory BP monitoring:ABPM)があるが,各国のガイドラインでその強調度が異なる.英国国立医療技術評価機構(NICE)の高血圧治療ガイドラインでは,ABPMをより重要視している.2013年6月に発表された新しい欧州高血圧学会・欧州心臓病学会(ESH/ESC)ガイドラインでは,HBPMとABPMを等価に位置付けている.わが国では,HBPMをより重要視している.これらの違いは家庭血圧計の普及度の違いによる.わが国では家庭血圧計がすでに4,000万台以上,広く普及し,家庭血圧を日常診療に取り入れている医師が多い.つまり,わが国は最も進んだ家庭血圧診療の先進国であるといえる.われわれと家庭血圧を用いた臨床研究(JMORE, JHOP)を実施している医療機関においては,高血圧患者における家庭早朝血圧が高値を示す「早朝高血圧」の頻度は,この10年間で,61%から43%に減少した.この効果は,家庭血圧に基づく早朝高血圧の抑制を意識した結果に他ならない.このように,家庭血圧に基づく降圧治療を徹底すれば,確実に血圧コントロール率は増加し,心血管リスクは低下する.診察室血圧は参考に留め,個々の患者の家庭血圧をガイドに,降圧薬の種類,用量,さらに投与時間帯を変える「家庭血圧に基づく高血圧個別治療」,これこそが高血圧診療において最も重要な最初の第一歩である.その重要性を十分に理解し,実践するための基礎知識とノウハウを,第一線で活躍されている先生方にまとめていただいた.本書を明日からの高血圧診療にお役立て頂ければ幸いである.エディトリアル