カレントテラピー32-3 サンプル

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Current Therapy 2014 Vol.32 No.3 91Key words293早朝高血圧:これからの高血圧診療のターゲット自治医科大学内科学講座循環器内科学主任教授 苅尾七臣早朝血圧が135/85mmHg以上の場合に早朝高血圧と定義する.早朝血圧は家庭血圧計で測定できることから,早朝高血圧は家庭血圧で診断できる.早朝高血圧は仮面高血圧(診察室血圧が正常血圧,かつ家庭血圧が高血圧)の1表現型でもあり,診察室血圧が正常血圧の早朝高血圧は,厳密には“仮面早朝高血圧”である.また,早朝血圧が他の時間帯よりも特異的に高い早朝高血圧(就寝時血圧が正常血圧で早朝血圧が高血圧の場合や,就寝時血圧よりも早朝血圧が15mmHg以上高い場合など)は,朝晩の血圧平均値とは独立したリスクとなる.早朝高血圧は,脳・心臓・腎臓,すべてのリスクと関連しており,診察室血圧で定義した高血圧よりも臓器障害が進行しているため,将来の脳卒中や後期高齢者の要介護リスクが高くなる.早朝高血圧には夜間高血圧から移行するタイプと,朝方に急峻に血圧が上昇するモーニングサージタイプがあり,ともに心血管病のリスクとなる.この2 つのタイプの区別には夜間血圧が不可欠である.われわれは,現在,夜間血圧が測定できる家庭血圧計の開発を進めており,24時間自由行動下血圧モニタリング(ambulatory blood pressuremonitoring:ABPM)と同等に夜間血圧を評価できることを明らかにした(自治医科大学家庭血圧研究).今後,家庭血圧でも2 タイプの区別がつくようになる.夜間から早朝にかけては,交感神経の活性化と圧受容体反射の抑制により,血圧の変動性が最も増大する時間帯である.早朝の血圧レベルの高値に加え,血圧変動性の増大や血圧モーニングサージは,24時間血圧レベルとは独立して心血管イベントや左室肥大,頸動脈硬化,無症候性脳梗塞など臓器障害のリスクとなる.軽度のモーニングサージは生理的現象であるが,過度のモーニングサージがリスクとなる.過度の血圧モーニングサージには,加齢,起立性高血圧や血管スティフネスの増大,さらに寒冷や精神・身体的ストレス,飲酒や喫煙,睡眠時無呼吸症候群の夜間低酸素などが関与する.逆にモーニングサージの消失も,夜間血圧が上昇するriser型や起立性低血圧などの自律神経障害と関連しており,リスクが増加している.降圧療法中の高血圧患者では,診察室血圧は良好にコントロールされていても,薬剤服用直前の早朝には降圧効果が減少しており,仮面早朝高血圧が多くなる.したがって,家庭血圧をガイドにした早朝高血圧管理が,これからの“質の高い高血圧診療”への最も重要な最初の第一歩となる.