カレントテラピー32-3 サンプル

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84 Current Therapy 2014 Vol.32 No.3286Ⅰ はじめに今日,本邦における高血圧患者は4,000万にも上るとされる1)が,このうち降圧目標を達成できているのはわずか十数%という調査もあり,高血圧診療上の大きな課題であるといえる.この原因として,未治療患者の存在や,治療中断者の問題などが挙げられるが,治療抵抗性高血圧患者に代表されるように,治療を受けていても血圧を降圧目標レベルまでコントロールできない患者が存在することも看過できない大きな問題である.これに対しては,患者ごとの血圧の特徴を正確に捉え,その特徴に応じた治療,すなわち高血圧個別治療の実践が,課題解決の大きな糸口となると思われる.近年,全世界の高血圧治療ガイドラインにおいて,朝と晩に測定された家庭血圧の重要性が強調されている2)~4)が,これに加え,睡眠時無呼吸症候群(sleepapnea syndrome:SAS)や自律神経異常,食塩感受性の増強など,種々の病態により修飾される夜間血圧の重要性も増してきている.われわれはこの夜間血圧(特に日々の家庭での夜間血圧)の把握こそが,高血圧個別治療の鍵と捉え,その計測・評価法の確立に向け研究を行っている.本稿では,われわれがこれまで取り組んできた夜間家庭血圧計の開発およびその臨床応用について,3ステップに分けて紹介する.Ⅱ 夜間家庭血圧計(Medinote)の開発まず第一のステップは,夜間血圧を測定できる家ITを用いた夜間家庭血圧測定システムの開発桑原光巨*1 ・苅尾七臣*224時間自由行動下血圧測定(ambulatory blood pressure monitoring:ABPM)は,夜間血圧測定のゴールドスタンダードとされ,エビデンスの集積も豊富であるが,日常診療で活用するうえでの課題も多い.近年,家庭血圧計にタイマー機能を搭載した夜間家庭血圧計の登場により,家庭血圧計でもABPMと同等の臨床的価値をもつ夜間血圧を計測できるようになった.さらに,治療抵抗性高血圧の主要因とされる睡眠時無呼吸症候群(sleep apnea syndrome:SAS)をターゲットとした夜間低酸素トリガー血圧計の開発が進んでおり,睡眠時無呼吸に起因する著明な血圧サージの計測が可能になってきている.われわれは最近,IT技術をベースとした夜間家庭血圧測定システムを構築し,夜間低酸素トリガー血圧計を用いて,治療抵抗性高血圧ならびに循環器疾患患者における夜間血圧と呼吸障害の頻度と予後に関する研究(SPREAD研究)を開始したので,機器開発の状況と併せて,その概要について紹介する.*1 オムロンヘルスケア株式会社学術技術部*2 自治医科大学内科学講座循環器内科学主任教授家庭血圧―これからの高血圧個別治療へ