カレントテラピー32-3 サンプル

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64 Current Therapy 2014 Vol.32 No.3266Ⅲ 糖尿病における家庭血圧の降圧目標糖尿病に高血圧が合併すると,高血圧がない場合に比べて心血管疾患発症のリスクが上昇するだけでなく,糖尿病性細小血管合併症の進行が加速する.数年前のガイドラインでは糖尿病患者における目標血圧レベルを130/80mmHgと低く設定していたが,最近の大規模研究(ACCORD試験)の結果より,血圧を積極的に下げてもあまり予後が改善しないことがわかってきたため,糖尿病においても非糖尿病と同程度の降圧目標にしようという流れになっている.『高血圧治療ガイドライン2009』(JSH2009)では,糖尿病における家庭血圧の目標値が初めて125/75mmHgと示された6).この数値は外来血圧と家庭血圧の差を考慮し,外来血圧の目標値130/80mmHgから単純に収縮期(systoric blood pressure:SBP),拡張期(diastoric blood pressure:DBP)ともに5mmHg引いた数値である.したがって,この血圧値には明確な根拠がなく,専門家によるコンセンサスで決まった数値である.その後,この降圧目標について,根拠となるようなエビデンスが出てきている.Niiranenらは,国際共同研究であるThe International Database ofHOme blood pressure in relation to CardiovascularOutcome(IDHOCO)研究において,心血管イベントに基づく家庭血圧値を発表した7).それによるとstages 1( 120/80mmHg),stage 2( 130/85mmHg)の高血圧前症および,stages 1 (140/90mmHg)およびstage 2高血圧(160/100mmHg)に相当する家庭血圧値はそれぞれ120/75, 125/80, 130/85, 145/90mmHgであったという.この研究では合計人数6,470名中,糖尿病患者はわずか546名(8.4%)であったが,糖尿病における目標外来血圧130/80mmHgに相当する家庭血圧目標値はstage 2の高血圧前症のそれである130/85mmHgであるため,家庭血圧値は125/80mmHgということになり,JSH2009のそれとほぼ同等であった.また,Noguchiらは,HOMES -BP研究のサブ解析において糖尿病患者における家庭血圧125/75mmHg未満において,それ以上よりも有意に心血管イベントが減少することを確認している5).われわれもJ -HOP研究における降圧治療中の糖尿病患者を対象に,尿中微量アルブミン値をreferenceとして外来血圧130mmHgに相当する家庭血圧値を解析したところ,外来血圧130mmHgは家庭血圧128mmHgに相当していた(AHA2012年 学会抄録より).したがって,糖尿病において外来血圧目標値を130/80mmHgとしている限り,家庭血圧の目標値については125/75mmHgという現在の日本高血圧学会(JSH)の基準で問題ないと思われる.Ⅳ 糖尿病における家庭血圧に基づいた降圧薬の使い方糖尿病患者における降圧薬の第一選択は,糖尿病や高血圧の各ガイドラインでレニン・アンジオテンシン・アルドステロン系(RAAS)阻害薬を使用することが推奨されており,順次他剤を併用し,効果をみながら目標血圧まで下げていく必要がある.この場合,通常は外来血圧値を目安に降圧薬を調整していくことになるが,家庭血圧のほうが外来血圧よりも予後や治療効果の予測に有用であるという結果を踏まえて,糖尿病患者では家庭血圧値に基づいて降圧治療を行った報告はあまりない.Kojimaらは,糖尿病患者における目標血圧130/80mmHgを目標に,降圧薬をstep 1からstep 8まで増量し降圧を図った8).その結果,全体でstep 4.0±1.5ですべての対象者が目標血圧を達成した.その結果,血圧コントロールに必要な薬剤数は推算糸球体濾過量(estimated glomerularfiltration rate:eGFR)に依存しており,血糖コントロールの指標には関係なかったという.同じ研究を外来血圧で行うことは白衣高血圧,すなわち,偽性の治療抵抗性高血圧が一定割合で存在するため難しい.この研究の結果は,家庭血圧が糖尿病患者において治療効果を判定するうえでも有用であることを表している.われわれは最近,JSH2009の記載通り,家庭早朝血圧125/75mmHg未満を目標として血圧を非常に積極的にコントロールすることで,さまざまな臓器障害指標が改善するかどうかについて検討を行った9).対象