カレントテラピー32-3 サンプル

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62 Current Therapy 2014 Vol.32 No.3264Ⅰ はじめに多くの高血圧や糖尿病ガイドラインでは,糖尿病患者における血圧評価の方法として,外来血圧で設定している.しかし,同じ糖尿病患者でも年齢,病期や合併症の有無により状態は大きく異なるため,個別の対応が必要である.その点,家庭血圧は個別治療という点で意義が大きく,まさに,テーラーメイドの治療を行うのに適している.本稿では,糖尿病患者における家庭血圧を用いた病態へのアプローチについて概説する.Ⅱ 糖尿病における家庭血圧の特徴糖尿病における家庭血圧の特徴は,非糖尿病の場合と同様に,まず,医療環境以外の環境における血圧値を評価することができるという点である.米国糖尿病学会(ADA)の『糖尿病治療ガイドライン』1)や日本糖尿病学会の『科学的根拠に基づく糖尿病診療ガイドライン2013』でも,糖尿病患者における家庭血圧の意義が記載されている.Kamoiらは外来通院中の糖尿病患者170名において,外来血圧および早朝の家庭血圧を測定し,早朝に測定した家庭血圧は外来随時血圧に比べて,細小血管障害,および大血管障害と密接に関連しており,特に腎症に関連が強いことを示した(図1)2).したがって,早朝の家庭血圧のコントロールが重要であ糖尿病合併高血圧江口和男*糖尿病患者は年齢,病期や合併症の有無により状態が異なるため,個別の対応が必要である.糖尿病における家庭血圧の意義はいまだ完全には確立されていないが,外来血圧よりも高血圧性臓器障害や心血管イベントの予測に優れ,治療効果の判定指標としても優れているため,糖尿病患者に有用であると思われる.糖尿病におけるわが国での外来血圧目標値は130/80mmHgであるが,『高血圧治療ガイドライン2009』(JSH2009)では家庭血圧の目標値を125/75mmHgと定めている.これは,コンセンサスで決まった数値であったが,その後の検討によって,外来血圧130/80mmHgに対応する家庭血圧はイベントの発症や臓器障害の程度から推定しても125/75mmHgは妥当な数値と思われる.平均年齢60歳程度の糖尿病患者に家庭血圧125/75mmHgを目標として積極的な降圧治療を行うと,臓器障害や血管指標が有意に改善する.今後,糖尿病患者における血圧管理に家庭血圧は必須になると思われる.* 自治医科大学内科学講座循環器内科学部門講師家庭血圧―これからの高血圧個別治療へ