カレントテラピー32-3 サンプル

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Current Therapy 2014 Vol.32 No.3 47家庭血圧による高血圧治療249高血圧治療ガイドラインでは,最大酸素摂取量の50%程度の運動を1回30分以上,週3回以上行うことが推奨されている15).これはおおむね早歩き,あるいはゆっくりとした階段歩行に相当する強度の運動である.また,冬季の寒冷刺激など気温の変化も血圧を上昇させる.空調で室温がコントロールされた診察室に比べ,外気温の変化が身体的ストレスとなり,仮面高血圧をきたす原因になる.高血圧患者の外来診察時血圧および家庭血圧は夏季に低く冬季に上昇する季節変動を示すが16),24時間の血圧変動では冬にも就眠中の血圧上昇は認められず,寝具や暖房による温度調節が血圧上昇の抑制に有効であることが窺われる17).1995年1月17日に起こった阪神淡路大震災は人口の多い地区を直撃して多くの死亡者を出し,その後の地域住民の生活にもストレッサーとなり影響を及ぼした.震源地より50km以内に居住し家庭血圧を測定していた高血圧患者の記録では,前年の同時期に比べ震災当日には明らかな上昇が認められ,数日後においても前年に比べ血圧の変動が大きかった18).同様に1991年の湾岸戦争,2001年9月11日のニューヨーク世界貿易センターへのテロ攻撃や,2011年3月11日の東日本大震災などの災害や事件も非医療環境下の血圧を上昇させたことが推測される.このようなストレスによる血圧上昇には主として交感神経活動の亢進が関与するため,降圧薬のなかでもβ遮断薬が災害時などの血圧上昇の抑制効果に優れると考えられている19).このほかに,家庭や職場における環境および社会的な背景因子などのストレスが血圧を上げ仮面高血圧をきたす原因となる場合があるが,これらのストレスに対するマネージメントの具体的な方策については系統的なものが確立されていない.その大きな理由のひとつは,ストレッサーの性質が状況に応じ多彩であり,共通のスケールを当てはめて評価することが困難であることが挙げられる.また,ストレスによる血圧の上昇は,ストレスを与える外因,すなわちストレッサーの種類だけでなく,ストレスを受ける患者側の対応によっても異なる20).例えばFriedmanら21)が示した攻撃的な性格(A型)と非攻撃的な性格(B型)ではストレスに対する反応が異なり,A型では自分の仕事の方針について決定権が与えられないなど攻撃的な行動を抑制されること,またB型では叱られることや責任を負うことが大きなストレスとなる22).したがって,ストレスマネージメントでは,個々の症例においてストレッサーの性質と程度を評価するとともに個人の性格を分析し,ストレスの構造を明確にすることが重要であると思われる.また,ストレスマネージメントとして精神科医療的なカウンセリングを行う際に,患者と必要に応じその家族を含めてストレスに対する方策が図られるが,場合によってはそれだけで状況の十分な改善が達成されず,医療サイドからさらなるアプローチを行うことが困難なことも少なくない.具体的な方策としては,①家庭内の不和,家族の病気・死亡,子供の受験,高齢者の独り暮らしなどの問題に対し家族,近親者,隣人,友人の協力も含めた対応を考えること,②仕事のやりがいや労働時間,休暇取得状況などを把握し適正化すること,③趣味や運動の習慣に留意し体重の変化など体調の維持を図ることなどが挙げられるが,その実現は必ずしも簡単ではない.表1に挙げられているように,肥満,糖尿病,メタボリックシンドロームなどの生活習慣病も仮面高血圧をきたしやすい危険因子とされている.したがって,仮面高血圧の病態の改善には,高血圧のみならず糖代謝異常,脂質代謝異常など肥満を基盤とした不適切な生活習慣に基づく病態を総合的に改善することが必要であると考えられる.そのなかで肥満は血圧上昇のみならず,糖尿病,メタボリックシンドローム,SASなど病態の原因,基盤,誘因となるものであるため,カロリー摂取制限や運動などの生活習慣の改善により適正な体重管理を行うことが重要である.Ⅳ 仮面高血圧に対する降圧薬治療表1では降圧治療中の高血圧患者においても仮面高血圧が少なくないことが挙げられており,これは降圧薬治療が適切でないことによる部分が大きいと思われる.その原因としては降圧効果の持続時間の