カレントテラピー32-3 サンプル

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46 Current Therapy 2014 Vol.32 No.3248すると思われる.われわれが,既治療高血圧患者を除いた人間ドック受診者590名を1日あたりエタノール摂取量別に非飲酒者(0~10mL),軽度(11~29mL),中等度(30~58mL),多量(59mL以上)飲酒者の4群に分けて比較した結果でも,中等度以上の飲酒群では飲酒量の増加に伴い,収縮期,拡張期血圧が用量依存的に上昇していた13).したがって,1日の飲酒量が日本酒にして2合を超えると,健常者においても血圧の上昇に寄与すると考えられる.アルコール自身は血管拡張作用をもつが,その血圧に対する影響についての成績は条件により一定していない.これには,アルコール摂取による交感神経系,レニン・アンジオテンシン系(RAS)の亢進など複数の因子が関与すると考えられる.Abeら14)の入院高血圧患者における検討では,連日アルコール摂取により24時間平均血圧は変らなかったが,夜間の血圧低下と早朝の血圧上昇が増強され,結果として血圧の日内変動が増大していた.また,飲酒が習慣化している場合には,その禁断症状は24時間以内にも発現するので,これも血圧の変動を増大させる要因となる.このような飲酒による血圧変動への影響が朝や夕方の時間帯における血圧上昇,すなわち仮面高血圧の状況をもたらし得ると思われる.したがって,ABPMや家庭血圧をモニターして飲酒が非医療環境下の血圧上昇を起こしていると考えられる場合には,節酒,すなわち1日のエタノール摂取量を30mL以下とし,依存症を防ぐために週1~2日の非飲酒日を設けるよう指導するべきである.運動,気温の変化,職場の仕事,家庭や生活環境,教育や社会環境,災害,情動などによる身体的,精神的ストレスはさまざまな程度に血圧を上昇させ,ストレスが多い環境にあるものは高血圧の頻度が高い.適度な運動を習慣的に持続することにより降圧効果が得られるが,運動中には血圧が上昇し仮面高血圧の状態を起こし得る.逆に運動不足がストレスになり,血圧や心血管疾患のリスクを高めるおそれもある.したがって,心血管疾患のリスク改善のために運動療法を行う場合には,著明な血圧変動をきたすような激しい運動は避け,より軽度の運動を継続的に行うことが望ましい.具体的には,わが国の血圧(mmHg)時 間心拍数(bpm)収縮期血圧拡張期血圧心拍数喫煙期禁煙期160140120100806012010080604012 14 16 18 20 22 24 2 4 6 8 10SE図1習慣的喫煙者における1週間の禁煙による血圧日内変動の変化〔参考文献9)より引用〕