カレントテラピー32-3 サンプル

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44 Current Therapy 2014 Vol.32 No.3246Ⅰ はじめに数多い高血圧患者の診療は受診時に測定された診察時血圧を指標として行われる場合が多い.今までに集積された大規模な疫学的研究によるエビデンスも,多くは診察時血圧に基づいて得られたものである.これに加え,近年では,携帯式自動血圧計を用いた24時間自由行動下血圧のモニター(ambulatoryblood pressure monitoring:ABPM)により,血圧の日内変動に関しさまざまな情報が示されている.また,家庭血圧計も十分な精度をもつ機種が市販されており,患者自身が自宅で測定した家庭血圧のデータが得られる機会も増加している.降圧治療の最終的な目標は,単に血圧を正常化することだけではなく,心肥大,腎障害などの臓器障害や脳卒中,心筋梗塞などの合併症を抑制し,患者の予後を改善することにある.血圧の日内変動に関する知見が集積されるにつれ,診察時血圧だけでなく,24時間の血圧変動を考慮した降圧治療を行うことが臓器保護のうえで意味をもつと推測されている.別項で述べられるように,仮面高血圧は外来診察時の血圧は正常であっても診察室以外における血圧測定値が高値となる場合であって,高血圧患者の長期的予後の改善を図るうえでその診断と適切に治療・管理することの重要性が強調されている.Ⅱ 仮面高血圧に対する治療の必要性外来で測定される診察室血圧による高血圧の診断基準は140/90mmHg以上であるが,診察室外で測仮面高血圧の治療石光俊彦*1・本多勇晴*2・早川弥生*3高血圧患者において臓器障害や心血管疾患を抑制し,長期予後を改善するには24時間にわたり厳格な血圧コントロールを達成することが望まれる.仮面高血圧の病態には,喫煙,飲酒,ストレス,肥満などの生活習慣や不十分な降圧治療が関係することが多い.特に,肥満は他の生活習慣病も促進し睡眠時無呼吸症候群(sleep apnea syndrome:SAS)などの原因となるため,適正体重を維持することが望まれる.したがって,その治療には,不適切な生活習慣を総合的に改善するアプローチと降圧薬治療を強化することを行う.降圧薬治療下にある高血圧患者において夜間や早朝に血圧上昇が認められる場合には,降圧薬の効果の持続が十分でないことが考えられ,より長時間作用の降圧薬を用いたり,1日2回投与,就寝前の降圧薬服用などを考慮する.また,腎機能が低下し食塩感受性を呈する場合には,減塩や利尿薬の追加併用によりナトリウム(Na)貯留による夜間や朝の血圧上昇が改善され,仮面高血圧の是正に有効である.*1 獨協医科大学循環器・腎臓内科主任教授*2 獨協医科大学循環器・腎臓内科講師*3 獨協医科大学循環器・腎臓内科助教家庭血圧―これからの高血圧個別治療へ