カレントテラピー 32-2 サンプル

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10 Current Therapy 2014 Vol.32 No.2110で完結しない.後述するが,介護や福祉などが医療と連携することで実現する.総合診療専門医には,このような医療以外の職種との連携も求められると考えている.Ⅲ 他の医療職・介護職との連携ができることこれまで述べてきた医療を,医師だけで患者に提供することは不可能である.それぞれの医療専門職や,介護の専門職とのチーム医療・介護が必要である.患者は医師に言いづらいことや聞きづらいこと(聞き忘れたことも含めて),いろいろなことを他の医療職に言う場合が多い.次の診察時に,その情報を医師がしっかりと把握したうえで対応すると,患者としてはとても安心し,医療スタッフ全体を信頼することができる.また,医師と患者とのやり取りのなかで,他の専門職から説明をしたり,相談を受けたりするほうが良いと判断された場合も,適切につないでもらえると患者としては大いに助かる.治療のために自分のライフスタイルの変更が必要な場合などは,専門のスタッフからアドバイスを受けることが理解と意欲につながる.このように,患者を総合的,全人的に診るためには,患者にかかわるそれぞれの専門職との情報を,双方向にやり取りする必要がある.医師はディシジョンメーカーであるため,得てして他の医療職からの情報を取捨選択して受け取りがちである.多面的な視点で患者を診るためには,さまざまな職種からの情報にしっかりと耳を傾ける必要がある.私自身,NPOの活動を通じてさまざまな医師と出会うが,患者から信頼されている医師ほど,他の職種の意見にしっかりと耳を傾け(時には誤りを指摘されることもあるが,素直に耳を傾けている),最善の判断ができるように努めていらっしゃる.このような医師になら,患者も「私はこのような生き方がしたい」と自分の思いを安心して伝えることができる.医療と介護の連携が言われるようになって久しい.しかし,実情はどうだろうか.私は厚生労働省のチーム医療推進会議の委員を拝命しているが,介護職種からもこの会議の委員が出るべきだと常々思う.地域で包括ケアを推進しているドクターに「介護職種の方々の専門性について,医師である先生はどのようにお考えですか」と尋ねたことがあった.そのドクターは,ご自身の患者さんの例を話してくださった.ご高齢の患者さんで,日中はベッドで過ごし,食事のときはベッドを起こして食べている方が,ある日肺炎になった.ドクターは誤嚥性肺炎だろうと考えたが,その人の世話をしているヘルパーが,誤嚥性肺炎ではないだろうという.理由は,日ごろ食事介助をしているときに,この人がむせたことがないからだそうだ.詳しく調べた結果,この患者さんは食事の後に横になっているときに,胃から食べ物が逆流して,それが肺のほうに入ったのだとわかった.このエピソードを話されたドクターは,「介護職の方は,本人の日常生活を知っている.それが,われわれにとって大変貴重な情報になる」と教えてくださった.このような意識で,介護職の方々とチームを組むことができるのは,患者を全人的に診る総合診療専門医ではないかと思う.また,自分のことを上手に説明できない患者の日常生活について代弁できる貴重な存在が介護職で,患者の生活に合った療養方法を知っている存在でもある.この介護職の方々から得た情報を診療に活かし,日常のケアがどのように本人の健康維持に有効なのかを介護職に伝えることが,患者の生活の質を保つことにつながるだろう.患者を総合的・全人的に診る医師とは,他の専門職種に対する敬意と信頼をもち,チームで医療や介護を提供できる医師であると思う.Ⅳ 地域を診る医師いうまでもなく,本格的な高齢社会を迎え,患者は増える.具合が悪くなった人を治すだけのマッチポンプ医療では,医療そのものがニーズに追いつけない.その対策のひとつとして,健診や検診事業が行われたり,さまざまな予防事業が行われている.しかし,それだけで十分だろうか.自治体が実施し