カレントテラピー 32-2 サンプル

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8 Current Therapy 2014 Vol.32 No.2108Ⅰ 心身の両方を診てもらえること私たちは痛いとき,苦しいときに,医療機関を受診する.その際にどの診療科を受診したらよいのか,正確にはわからない.特に診療科目が細分化されている大きな病院では,受診をしてみたものの「異常なし」と診断され,痛み・苦しみは解消されないこともしばしばある.個人的な話で恐縮であるが,私の身内も全身の激しい痛みを感じて総合病院の整形外科を受診した際,X線では異常が認められず,かといってほかの診療科を紹介してもらえず途方に暮れたことがあった.幸い,そのときの検査データを他の病院で総合的な診療をしてくれるドクターに見てもらうことができたため,専門科のある病院を紹介していただき受診して診断がついた.このときの経験から,横断的に診療できる医師の必要性を痛感した.これから高齢化が進み,身体的な疾患がさまざまな専門科にまたがる患者は増える.それらの領域について横断的に診療できる医師がいないところでは,患者は迷子になってしまう.さらに最近は精神面の疾患をもつ患者が増えている.認知症の患者が一般病棟への入院を断られるケースもある.認知症は精神疾患なのかという定義の問題や,入院施設,看護・介護の人手の問題もあるが,精神面の疾患をもつ人が身体面の疾患をもった場合に一般の医療も受けられるようになるためには,心身の両方を診療できる医師が必要である.診察のうえ,必要な場合は適切な医師へコンサルテーションすることも総合診療専門医の大切な働きである.ところが,それぞれの医師の個人的なヒューマンネットワークを基とした紹介では,心も患者の立場から:「総合的」「全人的」に診てもらうということ藤本晴枝*私は千葉県の九十九里沿岸部で,地域医療を守り,育てるための市民活動を行っている.本稿では,一人の患者として,どのような医師に診療をしてほしいか,といった「虫の眼」と,今後しばらく続く高齢社会のなかで,総合診療専門医にはどのような役割を担ってほしいか,といった「鳥の眼」から見た場合の,それぞれ期待することを述べる.虫の眼で見た場合,まずフィジカルな診療科目を横断的にカバーでき,さらに心身の両方を診てくれる医師が欲しい.また,提供される医療については,治す・支える・見送る医療のすべてにおいて,バランスが取れた医療を提供してほしい.次に,鳥の眼で見た場合,総合医に希望することは医療・介護スタッフとの連携である.最後に,住民の健康や生活を守るための「地域を診る医師」とはなにか,思うところを述べる.総合診療専門医には,オーケストラの指揮者のような働きを期待したい.ただし,医師個人に求められるものには限界がある.また,医師の働きを支えるシステムについてもわずかながら言及したい.* NPO法人地域医療を育てる会理事長総合診療―その歴史と現在,未来