カレントテラピー 32-2 サンプル page 14/26
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カレントテラピー 32-2 サンプル
Current Therapy 2014 Vol.32 No.2 43143Ⅰ はじめに家庭医懇談会(家庭医懇)は,昭和60年(1985年)6月に,「家庭医に関する懇談会」(座長:小泉明)として当時の厚生省(現 厚生労働省)に設置され,61年3月には論点検討メモとして取りまとめられた.同年5月には「養成面に関する小委員会」(委員長:牛場大蔵)と,「支援態勢に関する小委員会」(委員長:紀伊国献三)が設けられ,養成面,支援態勢からそれぞれ検討を加えられ,62年4月24日に「家庭医に関する懇談会報告書」が提出されている.家庭医懇の発足にあたって,当時の厚生大臣は,近年,わが国の保健医療を取り巻く環境は大きく変化し,諸外国にも例をみない急速な高齢化,慢性疾患の増大,国民の健康意識の変化などによる環境の変化を踏まえ,来るべき21世紀において,プライマリ・ケアを重視した包括的かつ継続的な保健医療体制の確立を目指した取り組みが重要だとして,医療の現状は医学・医療の分野での専門分化が進むなかで,人間を診る医療よりはむしろ疾病,さらには臓器を診る傾向にあると.しかも,プライマリ・ケアの中心的担い手の開業医は高齢化している.一方,患者もまた大病院志向が強い.今後は,住民の日常の健康管理,健康相談や一般的な疾患,外傷に対する診断・治療を十分に行うとともに,プライマリ・ケアを担い医療の継続性の中心となる家庭医ともいうべき医師の育成・普及が求められるとの趣旨を述べている.これらは今日においても十分に通用する言葉である.1980年代「家庭医懇談会」の経緯と結果岩﨑 榮*1980年代の保健医療界の時代背景と当時の家庭医への期待は,今日の総合診療医希求の現状と非常に似かよっている.昭和60年(1985年)6月に設置された「家庭医に関する懇談会」は当時の保健医療界にとっては画期的であり,期待も大きかった.すぐにでも家庭医制度の構築が始まるのではないかとさえ感じられた.思うに,この報告書を今読んでも決して時代的な古さを感じさせることもなく,今日的に総合診療医として論議されているものそのものである.時代を経て,今日ようやく日の目を見ようとする総合診療専門医が家庭医という名称でないことは残念ではあるが,家庭医懇談会(家庭医懇)の結果だとすれば,国際的には遅れをとったものの,30年も無駄ではなかったというべきであろう.そのためにも,今日,構築されようとしている総合診療医が本当の意味で国民・住民本位,患者中心の制度になることを切に願うとともに,本稿が制度設計にあたっているすべての人たちの目に触れられることを期待するものである.* NPO法人卒後臨床研修評価機構専務理事総合診療―その歴史と現在,未来