カレントテラピー 32-12 サンプル

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Current Therapy 2014 Vol.32 No.12 11一過性脳虚血発作の概念の変遷と早期診断1173AHA/ASA声明で提唱された神経症状が一過性(持続時間を問わず)で,画像上,脳梗塞巣を認めないとの定義が3%の施設で採用され4),神経症状持続時間が1時間以内で,画像上の脳梗塞巣の有無は問わないとの定義が2%の施設で採用されていた.以上の結果から,わが国の臨床の現場ではTIAの定義として,大多数が神経症状持続時間を24時間以内とする古典的な定義を用いており,画像上の急性脳梗塞の有無に関しては,脳梗塞を認めないとする定義と有無を問わないとする定義とが約半数ずつ採用されていた.したがって,TIAの診断基準に関しては脳卒中の専門病院でさえも,tissue -based definitionの立場をとる施設は半数に過ぎないことが示された.これを基に,TIA研究班においては,TIA患者における脳心血管イベント発症に関する前向き観察研究が2011年1月から開始され,2013年12月までに全国57施設から1,415例が登録され,現在追跡調査中である13).この多施設共同前向き観察研究で採用されたTIAの診断基準は,基本的にはNINDS -Ⅲに従い,脳血管の障害に起因すると考えられる局所神経症状が突発し,それが24時間以内に消失するものとし,CT/MRI上の責任病巣の有無は問わないと定義している.米国の最新のガイドライン(2014年AHA/ASA)と比較して,tissue-based definitionの概念を取り入れていない臨床的な診断基準(time-based definition)である.Ⅳ 今後のTIAの診断基準についてTIAと急性虚血性脳卒中(acute ischemic stroke:AIS)とを,神経症状の持続時間のみで区別するのは困難であり,同一スペクトラム上にある病態として,理解するという新しい概念が提唱されている.すなわち,TIAとAISとはともに急性脳血管症候群(acute cerebrovascular syndrome:ACVS)という同一スペクトラム上にある病態であり,両者を区別することにはあまり意味がないということが最近強調されている15),16).ACVSについては,大規模な国際多施設共同前向き登録調査(TIA registry.org)が2010年から2011年にかけて5,000例を登録し,5年間の追跡調査中である17).対象は発症後7日以内のTIAまたは軽症AISであり,日本では6施設から345症例が登録された.国内研究の代表者は内山真一郎である.この研究の結果が判明する2015年には,ACVS,TIAに関して新しい知見が得られることが期待される.TIA研究班の国内における前向き観察研究においても,全国57施設から1,415例が登録され,現在追跡調査中である.対象は発症7日以内に外来を受診したTIA患者である13).一方,日本の急性期病院の大部分で採用されている保険医療制度であるdiagnosis procedure combination(DPC)診断群分類では,従来は,脳梗塞と質問 TIAの診断にはどの定義を用いていますか?2%5% 3%abcdef42%48%?CTで判断:6.5%?MRI―DWIまで施行して判断:92.7%?未回答:0.8%図1日常診療で用いているTIAの定義a: 神経症状持続時間が24時間以内で,画像上の脳梗塞巣の有無を問わない(1990年,NINDS-Ⅲ)b: 神経症状持続時間が24時間以内で,画像上の脳梗塞巣を認めない(1990年,平井班)c: 神経症状持続時間が1時間以内で,画像上の脳梗塞巣の有無は問わないd: 神経症状持続時間が1時間以内で,画像上,脳梗塞巣を認めない(2006年,AHA/ASAガイドライン)e: 神経症状が一過性(持続時間を問わず)で,画像上,脳梗塞巣を認めない(2009年,AHA/ASA声明)f:その他〔上原敏志,峰松一夫:脳卒中 32:712, 2010(引用一部改変)〕