カレントテラピー 32-12 サンプル

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Current Therapy 2014 Vol.32 No.12 91171年にFisherが,内頸動脈閉塞症の8例の検討で,発症前に一過性の片麻痺,しびれ感,失明,非回転性めまい,失語または意識消失などの症状が観察されたと記載したことが最初の報告である5).その後,1965年に米国で開催された第4回プリンストン会議で,TIAという用語が正式に承認され,一般的に用いられるようになった1).1975年には米国でClassification and Outline of CerebrovascularDisease Ⅱ(CVD Ⅱ)が発表され,「TIAは血管障害に基づく一過性かつ局所性の脳機能障害を示し,神経学的後遺症を残さずに,2~15分,最長でも24時間以内に消失するエピソード」と定義された6).1990年に発表された米国のNational Institute ofNeurological Disorders and Stroke(NINDS)の分類第Ⅲ版(NINDS -Ⅲ)では,24時間以内に消失する局所的な脳虚血症状と定義された.このNINDSの定義はその後,各国の診断基準の基礎になった7).一方わが国では,1987年から3年間かけて厚生省循環器病委託研究「脳の動脈硬化性疾患に関する総合研究(代表者:山口武典)」が行われた.そのなかの分担研究課題(平井班)から提唱された「脳の動脈硬化性疾患の定義および診断基準に関する研究」において,頭部CTで脳梗塞を伴わない場合を狭義のTIAと定義した.しかし,偶発的に脳梗塞が認められても,症候発現と無関係である場合にはTIA(狭義)と診断してよいとの診断基準であった2).1995年以降,頭部CTに代わって急速に臨床応用が進んだDWIを用いた研究において,TIA症例の約半数で急性脳梗塞を認めることが判明した3),4).これを受けて,2002年に米国のthe TIA WorkingGroupによる新しい診断基準が提唱された8).その定義によると「TIAとは局所脳虚血あるいは網膜虚血が原因による短時間の神経障害による症候である.通常,症候は1時間以内に消失し,画像上急性脳梗塞の所見を認めないとする」とされた.2006年にNational Stroke Association(NSA)が,各国のガイドラインを統合したTIAの診断・治療のガイドラインを発表している9).このガイドラインでは,theTIA Working Groupの虚血発作持続時間を1時間以内にするという考えを取り入れている.また,2006年の米国心臓協会(the American Heart Association:AHA)/米国脳卒中協会(American StrokeAssociation:ASA)による「脳梗塞およびTIA患者の発症予防のためのガイドライン」には,「TIAは,脳もしくは網膜の虚血によって引き起こされる短時間の神経障害で,典型的な場合は症状が1時間以内に消失し脳梗塞巣を生じない」という定義が記載された10).その後,TIAの神経症状の持続時間を1時間以内にすべきかどうかで論争が巻き起こることになった.そこで,2009年にAHA/ASAによる科学的声明で,再度新たなTIAの診断基準が発表された4).それによると,TIAは「急性脳梗塞を伴わない局所的な脳,脊髄,または網膜の虚血によって生じる神経機能障害の一過性エピソードである」と定義された.2006年からの変更点としては,局所虚血症状を生じる部位として脊髄も加えられたこと,また,虚血症状の持続時間の記載がなくなったことである.さらに,2011年に発表されたAHA/ASAによる「脳梗塞およびTIA患者の発症予防のためのガイドライン」においても,TIAは「脳,脊髄もしくは網膜の局所の虚血によって引き起こされた短時間の神経機能障害で,急性脳梗塞を生じない」と定義された11).現時点で最新である本年(2014年)に発表されたAHA/ASAによる「脳梗塞およびTIA患者の発症予防のためのガイドライン」においても,2011年と全く同様に,TIAは「脳,脊髄もしくは網膜の局所の虚血によって引き起こされた短時間の神経機能障害で,急性脳梗塞を生じない」と定義されている12).TIAにおける神経症状の持続時間については,1975年の米国のCVD Ⅱ および1990年の米国のNINDS -Ⅲでは,24時間以内と定義された6),7).その後,2002年の米国のthe TIA Working Groupによる新しいTIAの診断基準では,神経症状の持続時間を1時間以内と定義した8).2006年のAHA/ASAのガイドラインも同様に,TIAの神経症状の持続時間を1時間以内と定義した.このように2006年までは,TIAは神経症状の持続時間を基に臨床的に定義(time -based definition)された病態であった.しかるに2009年のAHA/ASAによる科学的声明にお