カレントテラピー 32-12 サンプル

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76 Current Therapy 2014 Vol.32 No.121238不安定粥腫の診断と治療兵庫医科大学脳神経外科助教 進藤誠悟兵庫医科大学脳神経外科主任教授 吉村紳一粥腫(プラーク)の破裂とその結果起こる血栓症がアテローム血栓性脳梗塞の主な原因であり,血栓症を起こす可能性の高いプラークを不安定プラークと呼ぶ.不安定プラークは病理学的に脂質成分やプラーク内出血に富んでおり,炎症細胞浸潤により,線維性皮膜が菲薄化している.よって,不安定粥腫の診断には,プラーク内の成分や線維性皮膜の厚みを評価する必要がある.頚動脈超音波検査は,ベッドサイドで施行可能かつ侵襲も少なく,利便性の高い検査である.低輝度を示すものは脂質成分やプラーク内出血に富んだ不安定プラークであり,高輝度を示すものは線維性成分の多い安定プラークである. また, 超音波検査では,mobile plaqueやfloating thrombusなどの可動性病変を評価できる.最近では,超音波造影剤を用いたプラーク診断も行われており,造影されるプラークは病理学的に新生血管に富み,炎症細胞浸潤を認めるため,症候性のものが多い.一方で,石灰化の強い病変の場合はacoustic shadowにより評価が困難となる.MRIを用いたプラーク診断はコントラストに優れ,脂質やプラーク内出血と線維性成分との鑑別が容易で石灰化が評価の妨げとならず,客観性に優れた検査といえる.MRIプラークイメージには,spin echo(SE)法,心電図同期BB fast spin echo(ECG-BB-FSE)法,magnetization prepared rapid acquisitionwith gradient echo(MPRAGE)法など様々な撮像法があり,撮影方法の標準化が今後の課題である.T1強調画像での高信号は粥腫やプラーク内出血を示唆する.一方で,線維性皮膜の描出は困難な場合が多い.その他の検査法として,18F -fluorodeoxyglucose(FDG)PETを用いたプラーク診断では,炎症細胞浸潤を伴う不安定プラークがFDGの取り込みが多い病変として描出される.また,血管内プラーク診断として,血管内超音波断層法(intravascular ultrasonography:IVUS)や光干渉断層画像診断法(optical coherence tomography:OCT)が行われている.なかでもOCTは組織深達度が低く,深部の評価には適さないものの,空間分解能が10~20μmと非常に高く,詳細な線維性皮膜の評価が可能である.不安定プラークに対する治療としては,まずは抗血小板薬やスタチンなどを用いた内科的治療を行うが,症候性で50%以上,無症候性で80%以上の狭窄を有する場合や内科的治療に抵抗性のある場合には,頚動脈内膜剥離術(carotid endarterectomy:CEA)や頚動脈ステント留置術(carotid artery stenting:CAS)などの外科的治療を検討する.しかし,MRA time of flight(TOF)で高信号を示す病変は出血量が多く,CASの周術期合併症が多いため,CEAを行うなどの検討が必要である.急性脳血管症候群としての一過性脳虚血発作―脳卒中予防の水際作戦