カレントテラピー 32-12 サンプル

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40 Current Therapy 2014 Vol.32 No.121202にも症状が持続している,すなわち脳卒中が疑われる場合には,「直ちに専門施設へ紹介する」と回答した施設は85.1%であった(図3)10).一方,1時間前に発症した症状でも診察時に症状が消失しており,TIAが疑われる場合には「直ちに専門施設へ紹介する」との回答は42.9%と低率で,「直ちにではないが専門施設に紹介する」と回答した施設の36.0%とほぼ同数であった.この結果により,症状が消失している場合,開業医がTIAを緊急疾患として対応する割合が低いことが判明した.「TIA患者を専門施設に紹介するにあたり困ること」の質問に対して「困ることがある」との回答が70%を占め,「TIAの診断に自信がない」,「紹介する病院に困る」,「紹介したが受け入れてもらえなかった」等の回答が多かった.TIA診療における一般開業医から脳卒中専門施設へのアクセスの難しさが明らかとなり,気軽に相談できるシステムを構築する必要性が示された.2 わが国におけるTIAクリニックの試み筆者らは,TIAの開業医へのアンケート調査や過去の報告を基に,本邦における開業医と脳卒中専門施設との医療連携を改善させることを目的に,医療連携システムモデルを作成し試験運用を行った.すなわち,TIAに関するパンフレットを開業医に配布し,開業医が専門医に直接電話相談できるTIAホットラインシステムを導入した.紹介患者は,紹介日中に診察と頭部画像検査を受け,TIAと診断された場合には,即日中に治療が開始された.1年間の期間限定での試行であり,結果を1年前の同期間の紹介患者と比較した(図4).運用前は年間39例であったTIA疑い患者の紹介数は,システム開始後に114例へと増加した.運用前は14例(36%)であった発症当日中来院例は,運用後に76例(67%)と急増した(p<0.001).運用前は9例(23%)に過ぎなかった最終診断TIA例は,運用後は31例(27%)であり,全体に占める頻度自体は大きく変わらなかった.TIA診療において,開業医と専門施設との良好な医療連携システムを構築することにより,受診患者数が増加し,紹介までの時間が短縮し,より多くの患者に早期治療を開始できた.3 わが国におけるTIAの診断基準および初期対応の提案わが国におけるTIAの初期対応に関するアルゴリ(%)患者数9(23%)31(27%)(n=39) (n=114)p=0.680TIA mimics脳梗塞TIAの疑いTIA120100806040200運用前運用後図4 TIAクリニック運用前後のTIA疑いの紹介患者数と,最終的にTIAと診断された患者数(自験例)直ちに専門施設へ紹介直ちにではないが専門施設へ紹介直ちに画像検査直ちにではないが画像検査自施設に入院外来で精査抗血小板薬を処方して帰宅させる経過観察その他0 50 100 150 200 250 300(施設)症状消失症状持続図3大阪北摂地区の開業医,内科・外科を対象としたTIAに関する意識調査1時間前から半身の軽度脱力が出現し症状が持続している患者,および症状が消失している患者の対応(329施設).〔参考文献10)より引用改変〕