カレントテラピー 32-12 サンプル

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Current Therapy 2014 Vol.32 No.12 39一過性脳虚血発作の緊急対応1201護師に,17時から翌9時まではSUの当直医につながり,患者にTIAが疑われる場合には直ちにTIAクリニックに受け入れた.患者の神経症候がTIAかどうか判断が難しい場合には,看護師はいつでも専門医に相談できる体制がとられた.症候が持続し,TIAよりは脳卒中が疑われる患者は,TIAクリニックでなく救急病院を受診するように指示された.TIAクリニックでは,初期評価が4時間以内に終了できるようにシステムが整備された.まず専門医が神経学的評価を行い,TIAが疑われた場合には,頭部の画像検査(CTもしくはMRI),頸部エコー,経頭蓋超音波ドップラ(TCD),心電図,採血(血算,血糖,脂質の評価など)が追加された.TIAが診断され,入院が必要な場合は入院のうえ治療が開始され,入院が必要でない場合は治療方針について開業医にフィードバックされ,開業医で治療が継続された.わが国とは医療体制が違うため,フランスのSOS -TIAのシステムをわが国にそのまま導入することは難しいかもしれないが,TIAクリニックの整備や運営を考えるうえで大変参考になる.3 患者のトリアージTIA後の脳卒中発症リスクは一律ではないため,高リスクのTIA患者を効率よく正確にトリアージし,入院の適応を判断することがTIAクリニックの重要な役割のひとつである.TIA後の脳卒中発症リスクを予測するスコアとして,ABCD2スコアが広く用いられている5).これは,A(age),B(Blood pressure),C(Clinical features),D(Duration),およびD(Diabetes)の項目ごとに0~2点を与え,その合計点をもって評価するものであり,その点数が高いほど脳卒中発症リスクも高いとされる.2009年に発表された米国心臓協会と米国脳卒中協会(AHA/ASA)の共同声明では,72時間以内にTIAのイベントがあった場合は,①ABCD2スコアが3点以上,②ABCD2スコア0~2点で,2日以内に外来で診断的精密検査が完了できない場合,③ABCD2スコア0~2点で,発作の原因が局在性の虚血であるという証拠がある場合は入院させることが妥当であるとされている6).最近では,ABCD2スコアに,拡張強調画像(DWI)での陽性所見の有無,大血管の動脈硬化の有無を加味すると,TIA後の脳卒中発症リスクの予測精度をさらに高めることができるという報告がなされている7).一方ABCD2スコアは,非専門家がTIAを疑う際の参考としては有用であるが,専門医療機関で使う際の問題点も指摘されている.すなわち,スコアが低くても脳卒中が発症することもあり8),頭蓋内外の50%以上の頸動脈狭窄や心房細動などの塞栓性リスクがある患者では,脳卒中発症リスクが高まるため,ABCD2スコアの如何にかかわらず緊急入院させることが推奨されている9).Ⅳ わが国の現状1 開業医のTIAに関する認識と,脳卒中専門病院との連携平成21年度厚生労働科学研究費補助金による「一過性脳虚血発作(TIA)の診断基準の再検討,ならびにわが国の医療環境に則した適切な診断・治療システムの確立に関する研究(研究代表者:峰松一夫)」班(TIA研究峰松班)では,大阪北摂地区の開業医,内科・外科835施設を対象とし,TIAに関する意識調査を行った.アンケートを郵送で送り,329施設(39.4%)から回答を得た10).1時間前から軽度の片麻痺症状が出現し,診察時脳卒中(例)脳卒中のリスク(%)(95%CI)*予測された脳卒中リスク(%)†全患者(n=1,052) 13 1.24(0.72-2.12) 5.96TIA,新規病変なし(n=524) 7 1.34(0.64-2.78) 6.13TIA,新規病変あり(n=105) 5 4.76(2.01-11.06) 7.76TIA疑い(n=141) 1 0.71(0.10-4.93) 4.00表TIAクリニック開設後の90日以内の脳卒中発症率*:Kaplan-Meier法より計算†:ABCD2スコアから推定〔参考文献3)より引用改変〕