カレントテラピー 32-12 サンプル

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38 Current Therapy 2014 Vol.32 No.121200期(Phase 2)を対象に,90日以内の脳卒中発症率について比較した.その結果,10.3%であったPhase 1の脳卒中の発症率は,Phase 2では2.1%に激減した(図1).早期診断・治療により,TIA発症後90日以内の脳卒中発症率が80%も抑制されたことがわかる.2 SOS-TIAフランスのLavalleeら3)は,TIA疑いのある患者を24時間体制で受け入れるクリニックを開設し,脳卒中発症予防効果を検討した(SOS-TIA).ここでは,24時間体制で開業医からの電話相談に対応し,TIAが疑われる患者の場合はTIAクリニックに受診させ,包括的な検査によるトリアージを行った.TIAあるいは軽症脳卒中と診断され,TIAクリニックで発症24時間以内に治療が開始された場合の90日以内の脳卒中発症率は1.24%であり,24時間以内に治療が開始されなかった場合の90日以内の脳卒中発症予測値5.96%に比べ,79.2%も減少した(表).専門家がTIA患者を24時間体制で受け入れるシステムを構築すると,その後の脳卒中発症が激減することが示された.Ⅲ TIAクリニックを含むTIA診療システムの実際1 TIAケアシステムの推奨事項TIAの迅速かつ体系的な外来診療がその後の脳卒中の発症を減少させることが相次いで報告されたことから,欧米ではTIA患者を24時間365日診療できるTIAクリニックの診療体制が整備されつつある.米国のNational Stroke Association は,TIA患者の診療システムの改善を目的として,TIAクリニックを含む,「TIAケアシステム」の推奨事項を示している4).TIAのトリアージに関しては,一過性の神経症状を呈してから24時間以内の患者のみならず,1~7日前に発症した患者も緊急疾患とみなして診療すること,それ以前の発症であっても一過性の神経症状を有した患者では可及的速やかに診察することを必要としている.TIAクリニックで入院の可否を適切に判断し,入院が不要と判断しても24~48時間以内に病態を評価し,治療方針を決定する必要性がある.TIAの評価に関しては,評価は迅速になされるべきで,専門医の診察,血液検査,頭部の画像検査(MRI,CT),頭頸部血管画像検査(MRA, CTA,超音波検査),心電図,心電図モニタリング,心臓超音波検査などが必要で,TIAの評価に関するプロトコールの作成が必要となっている.入院管理に関しては,発症24時間以内の2時間ごとの頻回の神経所見の評価,心電図モニタリング,虚血性脳卒中が起きた場合の血栓溶解療法や,頸動脈狭窄症患者に対する緊急外科的治療の検討が必要であり,再発予防のために患者教育も必要で,外来の患者も,早期の検査と治療開始により脳卒中の発症を予防できるため,入院管理と同様の指針の作成が必要であるとしている.2 TIAクリニックの実際SOS -TIAで紹介されたTIAクリニックのシステムを紹介する3).システムに先立ち,TIAの定義や主要症候,早期の治療開始の必要性などを説明したパンフレットが開業医に送られ,TIAクリニックは,Stroke Unit(SU)を備えた大学病院内に,24時間365日診療ができるように整備された.開業医からの電話は,9時から17時まではTIA診療の専属の看Phase 1Phase 2p=0.0001日数0 10 20 30 40 50 60 70 80 90(日)12脳卒中再発(%)1086420図1 TIAまたは軽症脳卒中患者における発症後の脳卒中再発リスクPhase 1:開業医を受診してから平均20日目(中央値)に治療を受けた群,Phase 2:開業医を受診してから平均1日(中央値)に治療を受けた群.Phase 1の90日目の脳卒中発症率は10.3%であり,Phase 2の脳卒中発症率は2.1%であった.早期に治療を開始することで,脳卒中発症が80%減少した.〔参考文献2)より引用改変〕