カレントテラピー 32-12 サンプル

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Current Therapy 2014 Vol.32 No.12 371199Ⅰ はじめに一過性脳虚血発作(transient ischemic attack:TIA)患者は,早期に完成型脳梗塞を発症するリスクが高いため,迅速かつ適切な診断・治療が必要である1).患者・家族が緊急を要する疾患であることに気づかずに医療機関受診が遅れたり,あるいは受診しても適切な診断・治療がなされずに,脳梗塞を発症する例も少なくない.TIAは病院受診時には症状が消失しているため診断は難しく,開業医と専門病院の医療連携,受け入れ体制の整備などの医療システムの構築が必要になる.TIAクリニックは,近年,欧米で推奨されはじめた診療システムであり,TIA疑いの患者を,発症早期に24時間365日体制で受け入れ,神経学的診察,画像検査を行い,適切な治療を迅速に開始する.このシステムの活用により,TIA発症後の脳卒中の発症が劇的に減少することが英国やフランスから報告されている2),3).本稿では,TIAクリニックの有用性とTIA診療システムの実際,およびわが国の現状について概説する.Ⅱ TIAの早期診断・治療の有効性を示す報告1 EXPRESS研究Rothwellら2)は,The Early use of eXisting PREventiveStrategies for Stroke study(EXPRESS)という研究で,TIAの早期診断・治療が90日以内の脳卒中の発症率に及ぼす影響を検討した.すなわち,開業医がTIAを疑った患者を専門病院へFAXで紹介し,患者の治療開始までに平均20日かかっていた時期(Phase 1)と,開業医を受診した患者を直接専門病院へ紹介できるようにシステムを改善した時*1 国立循環器病研究センター脳血管内科*2 国立循環器病研究センター副院長急性脳血管症候群としての一過性脳虚血発作―脳卒中予防の水際作戦TIAクリニック鈴木理恵子*1・峰松一夫*2TIAクリニックは,近年,欧米で推奨されはじめた診療システムであり,一過性脳虚血発作(transientischemic attack:TIA)疑いの患者を,発症早期に24時間365日体制で受け入れ,神経学的診察,画像検査などを行い,適切な治療を迅速に開始する.このシステムの活用により,TIA発症後の患者が専門病院に受診するまでの時間が短縮し,その後の脳卒中の発症が著しく減少することが報告されている.欧米では,TIAクリニックを含むTIA診療システムが整備されつつあり,ABCD2スコアなどを用いた患者トリアージのシステムが構築されている.TIA研究峰松班でも同様のシステムを試みたところ,紹介患者が急増し,かつ専門病院紹介までの時間が短縮した.本研究班からは,わが国におけるTIAの診断基準や初期対応の試案が示されており,さらに現在進行中の「TIA患者前向き登録」の研究結果を基に,その活用方法が検討される予定である.