カレントテラピー 32-11 サンプル

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Current Therapy 2014 Vol.32 No.11 11CKDにおける心血管疾患の病態1063還元剤としてNO産生酵素(nitric oxide synthase:NOS)により産生される.NOS蛋白はN末端側のoxigenase domain,中央に存在するcalmodulin(CaM)binding domain, C末端側のreductase domainから構成される.同一酵素内に酸化と還元能を有する酵素である.oxigenase domainの活性部位にはheme分子が存在しており,heme ironに電子が供与されると酵素が活性化され,NO分子とcitrullineが生成される.oxigenase domainには補酵素tetrahydrobiopterin(BH 4)結合部位が存在している.NOSは2量体構造を形成しているが,oxigenase domainの2カ所のcysteinに結合したZnイオンが境界面に配置され,2量体構造の形成に重要な役割を果たしている.1 糸球体内皮障害とアルブミン尿糸球体内皮細胞は有窓性内皮細胞(fenestratedendothelium)であり,アルブミン程度のmaclemoleculeは容易に通過し,濾過障壁への寄与は少ないものと考えられていた.しかしながら,糸球体内皮細胞も濾過障壁として一定の役割を果たしていることが明らかになってきた.細胞表面にはglycocalyxと総称されるlayerが存在する.glycocalyxは糖蛋白,糖脂質,プロテオグリカンなどから構成される.内細胞表層にもglycocalyxが存在する.腎糸球体内皮細胞表面およびfenestra内にもglycocalyx層が存在することが示されている.肥満,耐糖能障害,高血圧を呈し,メタボリックシンドロームモデルとされるZucker fatty ratを用いglycocalyx層の変化を解析した.18週齢の同ラットでは対照群と比較して有意なアルブミン尿を認める.この時期においてglycocalyx層の減少を認めた.2 CKDにおける血管内皮機能障害のメカニズムNOは血管拡張,抗凝固,血小板凝集抑制,単球接着抑制等,血管内皮機能の主要部分を担う.血管内皮障害の本態は血管壁におけるNOバイオアベイラビリティの障害である.CKDでは,bioavailableNOが減少し,NO欠乏状態(NO deficiency)であることが示されている12).CKDでは複数経路が輻輳して,NOS機能を障害しNO deficiencyを招来することが示されている.主要なものは,①基質であるL- アルギニンの利用障害,②NOS機能・発現異常,③NOS阻害物質の蓄積,④酸化ストレスによるNO作用の拮抗,などである.1)L-アルギニン利用障害アルギニンはcitrullineから産生される.肝内で大量に産生されるものの,urea cycleに利用されるため,末梢利用へは供されない.近位尿細管で産生されるL- アルギニンが実質的な供給源となる.近位尿細管では濾過されたL - アルギニンの大半が再吸収される.腎障害が高度となり尿細管障害,脱落が進行すると産生低下,再吸収障害をきたし得る.肥満高血圧糖尿病などアルブミン尿蛋白尿血管内皮障害少数ネフロン?時間機能的変化可逆性150100GFR(mL/分/1.73m2)500 構造的変化難可逆性高血糖糸球体高血圧蛋白過剰摂取図2肥満,高血圧,糖尿病などの生活習慣病関連CKDの経過肥満,高血圧,糖尿病などでは高血糖,糸球体高血圧,蛋白過剰摂取により,GFRは増大する(糸球体過剰濾過).これらの病態は血管内皮障害を生じるため,これが原因となってアルブミン尿が出現する.この段階ではGFRは正常~増大している.蛋白尿が出現すると腎機能は次第に低下する.当初は糸球体の変化は機能的なものであり,可逆性に富む.次第に構造的変化(糸球体硬化)が進行し,可逆性を失う.〔参考文献10)より著者作図〕