カレントテラピー 32-11 サンプル

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10 Current Therapy 2014 Vol.32 No.111062に想定できる.糸球体腎炎のような腎固有疾患,例えばIgA腎症においてCKD stage1からCVDを高率に発症することはない.一方で,高血圧,糖尿病等では微量アルブミン尿(あるいは超微量域)からCVDを合併する.“アルブミン尿”は高血圧,糖尿病,メタボリックシンドローム,肥満,喫煙等の生活習慣病に関連したCKDで共通してみられる早期のhallmarkである9).一方,糸球体腎炎では蛋白尿から始まる(図1).国民への啓発を行うためには,できるだけ簡明な概念が必要であり,成因を一切問わず,一定以下の腎機能低下あるいはアルブミン尿の2つの条件でCKDを定義づけた.概念普及には大きく寄与した定義であるが,個別化医療を実践するうえでは,oversimplificationの感はぬぐえない.CKD概念普及の黎明期から,すでにこの葛藤を喝破していたのが,Remuzziらである10).彼らは高血圧,糖尿病,肥満等を起因とするCKDでは,血管内皮障害とインスリン抵抗性を共通基盤として,まずアルブミン尿が出現し,次いで蛋白尿期を経て,腎機能低下に至る,それゆえ,アルブミン尿はCVDとも連関している,ことを見出した.このような病態を総括して,albuminuria associated diseaseと呼称することを提唱している(図2).一方,蛋白尿から始まる疾患(糸球体腎炎等)では,蛋白尿とともに,腎機能が低下し,「腎機能低下と連関してCVDを発症」する.Proteinuria -associateddiseaseと見なすことができる.慧眼である.5 血管内皮障害はCVDと同時に腎機能低下の進展にも関与するここまでCKDにおいて一定以下の腎機能低下とアルブミン尿の両者が異なる様式で血管内皮障害と関連し,ひいてはCVD発症と連関することを見てきた.血管内皮障害は,CVD発症だけでなく,腎機能障害の進展に病因として関与し,末期腎不全リスクとなる.血管内皮障害は血管内皮機能評価の対象である橈骨動脈などの末梢動脈だけでなく,腎内の細小動脈においても生じていることが示されており,腎内血行動態変化を介して,末期腎不全への移行と関連するのではないかと考えられる11).Ⅲ 内皮機能の主要要素である一酸化窒素(NO)とNO産生酵素内皮細胞が血管平滑筋弛緩因子(endotheliumderived relaxing factor:EDRF)を産生することは1980年にFurchagottにより報告された.その後,EDRFの本体が一酸化窒素(nitric oxide:NO)であることが同定された.NOは血管拡張作用のみならず,血小板凝集抑制,高次脳機能,末梢神経における伝達物質としての作用等,循環系,神経系,免疫系において広範な機能を担う.NOはL - アルギニンと酸素を基質とし,NADPHをCKD stage1 2 3 4 5末期腎不全喫煙加齢シンドロームメタボリック肥満糖尿病高血圧血管内皮障害多発性嚢胞腎慢性糸球体腎炎脳卒中,虚血性心疾患心不全認知機能障害脳卒中,虚血性心疾患,心不全,認知機能障害血管内皮障害微量アルブミン尿蛋白尿末期腎不全図1CKDと血管内皮障害高血圧,糖尿病,肥満,メタボリックシンドローム等の生活習慣病に起因するCKDでは,当初から血管内皮障害の結果,アルブミン尿が出現する(albuminuria associateddisease).一方,腎固有の疾患である慢性糸球体腎炎等ではGFR低下に不随して血管内皮障害を生じる.〔著者作図〕