カレントテラピー 32-11 サンプル

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Current Therapy 2014 Vol.32 No.11 91061さらに血管透過性を適切に制御する.高血圧や糖尿病では,血流変化,代謝変化を介して血管内皮機能障害,活性化を生じ,透過性変化,凝固亢進,血小板凝集,炎症が惹起される.一連の変化は短期的には適応的応答であるが,長期化することにより動脈硬化発症・進展,諸臓器の臓器障害機序となる.内皮細胞に生じる変化は当初は機能的なもの(内皮機能障害)であるが,次第に内皮細胞の形態変化,脱落を生じる.本稿では機能的,形態変化を包括して血管内皮障害と呼称する.1 CKDには血管内皮障害が付随するGFR 60mL/分/1.73m2未満およびアルブミン尿・蛋白尿の存在,これら2要因は,なぜ,CVD発症と連関するのか.血管内皮障害がその答えであると想定されている4).CKDには血管内皮障害が随伴することが示されている.血管機能不全を評価する方法としては,①血管内皮機能検査〔プレチスモグラフィ,血流介在血管拡張反応(flow-mediated vasodilation:FMD),reactive hyperemia peripheral arterial tonometry(RH -PAT)〕,②動脈スティフネス〔頸動脈- 大腿動脈間脈波伝播速度(carotid-femoral pulse wavevelocity:cfPWV),上腕- 足首間脈波伝播速度(brachial-ankle pulse wave velocity:baPWV),心臓足首血管指数(cardio ankle vascular index:CAVI)〕,等がある.2 GFR低下と血管内皮障害との関連GFRが一定以下に低下すると血管内皮障害を生じる.FMD,プレチスモグラフィを用いた検討で,CKD stage3以降,特に末期腎不全,透析患者において血管内皮障害が付随することが報告されている5).このように腎機能(GFR)低下が血管内皮機能障害と連関することが証明されている.しかしながら,中等度以上の腎機能低下,特に末期腎不全では,血圧異常,糖代謝異常,加齢等の血管内皮障害と関連する複数の交絡因子を併存することが多い.これら交絡因子の影響を排除するために,小児の腎不全例で血管内皮機能が解析されている6).Kariらは先天性の腎低形成,逆流性腎症等で腎不全をきたした小児を対象にFMDで血管機能を評価した7).その結果,これら小児腎不全例においてFMD値の有意な低下を認めた.また,成人同様にCVD発症および関連死亡率が高いことも示されており,腎機能低下とともに進展する血管内皮障害が関与すると考えられている.3 アルブミン尿と血管内皮障害との関連尿蛋白の検出には通常,試験紙法が用いられる.微量アルブミン尿は試験紙法での検出閾値以下の少量の尿中アルブミン排泄状態を指す.尿中クレアチニン排泄量で補正したアルブミン/クレアチニン比(ACR)で評価されることが多く,30 mg/gCr - 299 mg/gCrを微量アルブミン尿と定義する.数多くの臨床研究により,微量アルブミン尿はCVD発症の危険因子であることが明らかになった.高血圧や糖尿病のみならず健常人においてもCVDの危険因子であることが判明している.さらに従来の微量アルブミン尿のカットオフ値以下の少量のアルブミン尿(超微量アルブミン尿)がCVD発症の危険因子であることも明らかになった8).一般住民においても「正常」域の少量のアルブミン排泄がCVDリスクであることが示されている.従来normal, high -normal とされたレベルにおいてもCVD リスクとなる.心血管病危険因子としてアルブミン尿の正常カットオフ値をより低いものに再設定する必要があろう.また血圧値と同様に,アルブミン尿もCVD発症の危険因子として連続変数(continuous risk factor)であることを認識する必要がある.4 アルブミン尿と腎機能低下は異なる様式・メカニズムで血管内皮障害と関連する1の項で,腎機能低下が血管内皮障害と関連し,CVD発症へと連関することを述べた.小児腎不全においても同様の関係があることから,“腎機能低下・腎不全”自体が直接,血管内皮機能を障害させると推測できる.一方で,微量のアルブミン尿は,なぜCVDと連関するのだろうか.この段階では,通常腎機能は正常である.CKD概念の要諦は,「腎障害の成因を問わない」ということであった.しかしながら,CVDとの連関様式を考えると,原疾患の影響が大きいことは容易