カレントテラピー 32-11 サンプル page 5/36
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カレントテラピー 32-11 サンプル
8 Current Therapy 2014 Vol.32 No.111060Ⅰ はじめに生活習慣変化,高齢化を背景にして日本人の疾患構成,成因は大きく変化しており,腎臓病もその例外ではない.腎臓病の成因,臨床像は変貌している.軽微な腎機能障害あるいはごく微量のアルブミン尿の存在は,末期腎不全に至る以前に,脳卒中,虚血性心疾患などの心血管疾患(cardiovascular disease:CVD)発症と関連する.早期から腎障害を検出し治療介入することの重要性が認識され,慢性腎臓病(chronic kidney disease:CKD)の概念が提唱された.CKDに該当する成人人口が約10%にも上り,CKD発生の原因として,高血圧,糖尿病,メタボリックシンドローム等の生活習慣病と加齢が関与する1).CKD の定義を構成するもののなかで,①糸球体濾過量(glomerular filtration rate:GFR)60 mL/分/1.73 m2 未満および②アルブミン尿・蛋白尿の存在,が各々独立したCVD発症リスクであることが示されている.なぜCKDがCVD発症リスクとなるのか,①,②について各々別個の機序が想定されるが,ある段階から血管内皮障害が両者に共通したメカニズムであることが判明しつつある2).Ⅱ 血管内皮機能障害・内皮細胞障害血管内皮機能障害がCVD発症に共通する最早期病態であることが確立されている3).血管内皮細胞はエンドセリン,プロスタグランジン類等の多彩な生理活性物質を産生することから,脂肪細胞と並んで生体内の最大内分泌臓器と称せられる.内皮細胞は血流のずり応力を感知し,血管トーヌス維持,血管壁に抗凝固・抗血栓性を付与し,線溶系を駆動することで単球等の血球の付着を抑制し,血管内皮障害柏原直樹*1・桑原篤憲*2・佐藤 稔*3腎機能障害あるいはアルブミン尿・蛋白尿の存在で定義づけられる慢性腎臓病(chronic kidneydisease:CKD)は,末期腎不全への進行だけでなく,脳卒中や虚血性心疾患,心不全と強く連関することが判明している.さらに認知機能障害との関与も示された.なぜCKDはこれらの脳・心血管疾患発症と関連しているのか? 血管内皮障害が重要な仲介機序であることが明らかになった.アルブミン尿の発症に血管内皮障害が関与し,糸球体濾過量(glomerular filtration rate:GFR)が低下すると広範に血管内皮機能が障害される.さらに進行性の腎機能障害にも内皮障害が原因的に関与することも示された.CKDにおける血管内皮障害のメカニズムを解明することにより,CKDにおける脳・心血管,腎保護が可能となる.*1 川崎医科大学腎臓・高血圧内科学教授*2 川崎医科大学腎臓・高血圧内科学講師*3 川崎医科大学腎臓・高血圧内科学特任准教授慢性腎臓病(CKD)と心血管疾患の関連―最近の考え方と治療の動向