カレントテラピー 32-11 サンプル

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86 Current Therapy 2014 Vol.32 No.111138高齢者CKD患者の低栄養・サルコペニア東北大学大学院医学系研究科内部障害学分野准教授 伊藤 修慢性腎臓病(chronic kidney disease:CKD)では経口摂取量の低下のみならず,尿毒素の蓄積,代謝亢進,炎症,酸化ストレス,インスリン抵抗性など複数の要因が関与し,体蛋白(骨格筋)やエネルギー源(体脂肪)が減少する.それに対して,protein -energy wasting(PEW),malnutrition, inflammation,atherosclerosis(MIA),サルコペニアなどの概念が提唱され,確立されている.PEW の診断に際しては,①血清アルブミンやプレアルブミン,コレステロール等の血清生化学,②body mass index,体重減少,体脂肪率等の体格,③筋肉量やクレアチニン産生量,④たんぱく質摂取量やエネルギー摂取量等の食事量を含む4 つのカテゴリー中,1つ以上の項目を満たすカテゴリーが3つ以上ある場合,PEWと診断される.高齢者CKD患者においては,加齢や腎機能低下に伴い,食事摂取量の低下,慢性炎症,過度な食事制限(カロリー,たんぱく)等のさまざまな要因でPEW が生じる.サルコペニアとは,ギリシア語で「肉」を意味する「サルコ」と「減少」を意味する「ペニア」からなり,狭義では加齢に伴う骨格筋の減少に対して用いられるが, 広義ではCKD などの慢性疾患に伴う筋肉量の減少に対しても用いられる.その診断には,筋肉量減少(四肢骨格筋が健全な若年成人の平均値よりも2 標準偏差以下)だけでなく,筋力あるいは身体機能の低下が必要である.アジアのワーキンググループの診断アルゴリズムでは,通常歩行速度(カットオフ値:0 . 8 m/秒未満)と握力(男性26 kg 未満,女性18 kg 未満)を測定することを提唱している.加齢に伴い,また,腎機能が低下するに従い,サルコペニアの合併率がより高くなることが明らかとなっている.サルコペニアの主な臨床症状は転倒と骨折であるため,要介護・要支援状態となる大きな要因であり,認知機能の低下や生命予後に影響する.CKDでは,①代謝性アシドーシスによる筋蛋白分解の亢進,②筋内アンジオテンシンⅡの増加による筋蛋白分解の亢進,③筋サテライト細胞の減少,④筋ミオスタチンの増加による筋蛋白合成の阻害等の機序により,サルコペニアを高率に合併する.年齢,貧困,過体重,運動不足,たんぱく質・脂肪・低VitD3血症,拡張期高血圧,HbA 1 c 高値,インスリン抵抗性等がサルコペニア発症の関連因子であることが報告されている.慢性腎臓病(CKD)と心血管疾患の関連―最近の考え方と治療の動向