カレントテラピー 32-11 サンプル

カレントテラピー 32-11 サンプル page 21/36

電子ブックを開く

このページは カレントテラピー 32-11 サンプル の電子ブックに掲載されている21ページの概要です。
秒後に電子ブックの対象ページへ移動します。
「電子ブックを開く」をクリックすると今すぐ対象ページへ移動します。

概要:
カレントテラピー 32-11 サンプル

Current Therapy 2014 Vol.32 No.11 49ガイドラインにみるCKDの管理治療のあり方と心血管疾患1101も,あらかじめACEIで拡張期血圧90mmHg未満への降圧療法を行うと,ジヒドロピリジン系Ca拮抗薬の追加投与で130/80mmHg未満への厳格な降圧療法を行っても,末期腎不全のリスクはそれ以上減じなかった.CKD G3-G5区分を対象としたKEEP観察研究では130~139 mmHgの収縮期血圧帯がESKDへの進行率が最も低く,130 mmHg未満での減少は認められなかった.これらのエビデンスは,糖尿病非合併CKD全体において,CKD進行抑制の点では少なくとも140/90mmHg未満を降圧目標とすることを強く推奨する根拠となると考えられた.しかし,一律的な130/80mmHg未満への厳格降圧の必要性を支持するものではない.一方,MDRD本試験後のサブ解析では,尿蛋白0.25g/日以上では厳格降圧群において蛋白尿の増加が抑制され,さらに尿蛋白1g/日以上では腎機能低下速度の抑制が観察された(図1).また,CKDの進行を検討した11件のランダム化比較試験の患者データを用いた回帰分析では,収縮期血圧110~129mmHgおよび蛋白尿2g/日未満に管理できた症例で最も腎機能障害進行が緩徐であった.この解析では,収縮期血圧130 mmHg未満に達しなかった症例で尿蛋白1g/日以上の場合腎機能障害が進行したが,1g/日未満の場合には進行を認めなかった.そして,本試験終了後のMDRD Extensionコホート解析では,全体および尿蛋白1g/日以上においてESKDと死亡について厳格降圧群の優位性が認められた13).またAASK Extensionコホート解析では,蛋白尿合併症例(尿蛋白/クレアチニン比>0.22,尿蛋白>0.3g/日に相当)では厳格降圧群〔目標血圧125/75mmHg未満(平均動脈圧92mmHg未満)〕のほうが通常降圧群〔目標血圧140/90mmHg未満(平均動脈圧107mmHg未満)〕よりも腎機能低下速度の抑制効果が認められたが,蛋白尿非合併例では厳格降圧群の通常降圧群に対する優位性は認められなかった(図2)14).さらに,糖尿病非合併CKDを対象とした3つの本試験(MDRD,REIN- 2, AASK)と2つの本試験後のコホート研究(MDRD, AASK)を対象とした解析でも,全体では厳格降圧群(目標血圧125~130/75~80mmHg未満)と通常降圧群(目標血圧140/90mmHg未満)で両群間に腎イベント発生の有意差は認めなかったが,蛋白尿合併例では厳格降圧群において通常降圧群に比較して腎イベントの抑制傾向が認められた(図2)15).これらのエビデンスから,糖尿病非合併CKDのなかで,A2, A3区分においては130/80mmHg未満への厳格降圧を目指すことを支持すると考えられた(表).糖尿病非合併CKDにおけるCVD発症抑制からみた降圧目標のエビデンスについては,CKDでは心筋GFRの低下度(mL/分/年)ベースラインの尿蛋白量(g/日)0-0.250.25-11.0-3.0≧3.00-0.250.25-1.01.0-3.0≧3.0(301) (104)0-2-4-6-8-10-12-14-16A試験B試験0-2-4-6-8-10-12-14-16(119) (54) (77) (59) (63) (32)図1The Modification of Diet in Renal Disease(MDRD)試験におけるベースラインの尿蛋白量ごとの厳格降圧の効果The Modification of Diet in Renal Disease(MDRD)試験において,A試験ではGFR 25~55mL/分/1.73m2およびB試験ではGFR 13~24mL/分/1.73m2を対象にして,通常降圧群〔目標血圧140/90mmHg未満(平均動脈圧107mmHg未満)〕と厳格降圧群〔目標血圧125/75mmHg未満(平均動脈圧92mmHg未満)〕によるGFR低下に対する効果を検討している.厳格降圧群はA試験では尿蛋白>0.25g/日およびB試験では>1g/日の対象でGFR低下抑制効果を認めた.黒丸は通常降圧群,白丸は厳格降圧群,括弧内の数はGFR測定ができた人数を示す.