カレントテラピー 32-11 サンプル page 13/36
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カレントテラピー 32-11 サンプル
Current Therapy 2014 Vol.32 No.11 351087認めている(図1)6).背景に肥満・脂質異常症・耐糖能異常などの代謝性疾患の増加が指摘されており,今後も増加が懸念される.Ⅲ わが国におけるCKDとCVDの疫学1 CKDにおけるCVDの有病率Isekiら7)は,2008 年度の特定健診受診者のうち332,174名に関して,eGFRおよび試験紙法による蛋白尿の程度とCVDの有病率(既往歴)を調査した.対象者の平均eGFRは75.0 mL/min/1.73 m2と欧米に比較して低値であった.対象者の14.2%がeGFR<60 mL/min/1.73 m2,5.4%が1+以上の蛋白尿を認めた.既往歴の割合は,腎臓病0.7%,脳卒中3.3%,心臓病6.0%であった.CKDの重症度が進むほどCVDを発症しやすくなる可能性が示唆された(図2)7).2 CKDにおけるCVDの発症・死亡率Nagaiら8)は2008年から2010年までの特定健診受診者を経時的にフォローし,CKDとCVD発症の関連を検討した.観察期間中に12,041例の新規CVDイベント発症を認めた.蛋白尿とeGFRの低下は,CVDの危険因子であった.さらに,観察期間中のeGFRの低下(-10%)は,男性でハザード比1.23(95%信頼区間1.18- 1.28),女性でハザード比1.14(95%信頼区間1.10- 1.18)と有意な危険因子であり,蛋白尿・eGFRの低下で補正しても有意で独立した危険因子であった.Ninomiyaら9)は,40歳以上の久山町研究対象者のうちCVDの既往歴のない2,634 名(男性1,110名,女性1,524名)を12年間フォローし,新規のCVDの発症を検討した.調査開始時に,eGFR<60 mL/min/1.73 m2 のCKD群では,非CKD群と比較して男性では冠動脈疾患発症のリスクが高く,ハザード比2.26(95%信頼区間1.06- 4.79),女性では脳梗塞発症のリスクが高く,ハザード比1.91(95%信頼区間1.15- 3.15)であった.Irieら10)は,茨城県で1993年に健康診断を受診した40~79歳の91,432名(男性30,764名,女性60,668名)を前向きに10年間追跡調査した.尿蛋白陽性者のCVDによる死亡の相対危険度は,男性1.38(95%信頼区間1.05- 1.79),女性 2.15(95%信頼区間1.64-2.81)と高値であった.同時に,eGFR の低下もCVD死亡の有意な予測因子であることを報告しているが,蛋白尿の有無とeGFRの低下の間には相関を認めなかった.また,eGFR≧60 mL/min/ 1.73 m2の群においても蛋白尿の存在は,CVDの有意な危険因子であった.さらにCVDの内容で検討してみると,eGFR<60 mL/min/1.73m2 群は,eGFR≧100 mL/min/1.73 m2と比較して脳卒中の死亡相対危険度は有意に高いが,冠動脈疾患は有意ではなく,蛋白尿陽性では冠動脈疾患の死亡相対危険度は有意に高いが脳卒中では有意でなかった.Nakayamaら11)は,岩手県大迫町の一般地域住民15女性男性頻 度(%)10504.1(n)(911)(1,208) (1,165)(1,576) (1,413)(1,882)1974年1988年2002年7.34.811.28.710.7****:p<0.01vs.1974年図1久山町研究におけるCKD頻度の推移〔参考文献6)より引用改変〕