カレントテラピー 32-11 サンプル page 12/36
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カレントテラピー 32-11 サンプル
34 Current Therapy 2014 Vol.32 No.111086Ⅰ はじめに慢性腎臓病(chronic kidney disease:CKD)は末期腎不全(end-stage kidney disease:ESKD)および心血管疾患(cardiovascular disease:CVD)発症ならびに死亡の危険因子である1).わが国においては透析患者が依然として増加傾向にあり2),透析患者数の増加を食い止めることは重要課題である.また,CKD患者のCVD発症および死亡を抑制する取り組みも必要である3).CKDではCVD発症の要因として古典的危険因子以外に,非古典的(腎疾患関連)危険因子(貧血,カルシウム・リン代謝異常,慢性炎症など)が加わるため,病態はより複雑である4).欧米とは食事,生活習慣,CVDの頻度および病態も大きく異なる.日本の疫学データからCKDの頻度およびCKDとCVDとの関連を把握することは,効果的な対策を立てるために必要不可欠である.Ⅱ わが国におけるCKDの頻度日本腎臓学会が全国約52万人の住民健診データを基に,CKD患者の頻度について検討を行った5).20歳以上の人口において推算糸球体濾過量(estimatedglomerular filtration rate:eGFR)<60mL/min/ 1.73m2は1,926万人(18.7%),eGFR<50 mL/min/ 1.73 m2は418 万人(4.1%)に及ぶ.CKDはわが国においても有病率の高い疾患であるといえる.二宮ら6)は,福岡県久山町の一般地域住民を対象としたコホート研究(久山町研究)において,CKDの有病率の変化を検討している.1974年と2002年の調査時におけるCKDの年齢調整有病率は男性4.1%から8.7%,女性で7.3%から10.7%と有意な上昇を日本の疫学データから相澤直輝*1・井関邦敏*2慢性腎臓病(chronic kidney disease:CKD)は,新しい疾患概念であり,わが国ではまだ十分に認知されていない.CKDは検尿(蛋白尿,アルブミン尿)および採血(血清クレアチニン)によって簡便にその重症度が判定できる.末期腎不全(end-stage kidney disease:ESKD)発症のみならず,心血管疾患(cardiovascular disease:CVD)発症および死亡の危険因子であることが明らかとなっている.わが国では依然として透析患者が増加傾向にあり,特に糖尿病性腎症患者をいかにESKDへ進展させないかは重要課題である.食習慣および生活習慣の異なる欧米と日本においては,CKDおよびCVDの頻度,合併症などが大きく異なる.わが国独自のCKD対策のためには,日本人を対象にした疫学データが不可欠である.現在,わが国で実施中の疫学的研究についても言及した.*1 琉球大学医学部附属病院血液浄化療法部*2 琉球大学医学部附属病院血液浄化療法部診療教授慢性腎臓病(CKD)と心血管疾患の関連―最近の考え方と治療の動向