カレントテラピー 32-10 サンプル

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Current Therapy 2014 Vol.32 No.10 11骨粗鬆症の病態・診断と治療959⑥男性についても大腿骨近位部と腰椎の骨密度を用いる,⑦脊椎X線像での骨粗鬆化の表記を削除,⑧定量的超音波法(QUS)について診断基準への記載を見送る,⑨骨密度が-2.5SDより大きく-1.0SD未満の場合を骨量減少〔low bone mass(osteopenia)〕とする,⑩骨粗鬆症の重症度について,が付記された.2012年度版の最大の特徴は,椎体または大腿骨近位部骨折があれば,骨密度に関わらず骨粗鬆症と診断される点である.上述のごとくこれらの骨折の既往は骨折リスクを高めるため,椎体または大腿骨近位部骨折があれば,正常骨密度であっても骨粗鬆症と診断される.椎体または大腿骨近位部骨折以外の脆弱性骨折がある場合は,これまでどおり骨密度がYAMの80%未満の例を骨粗鬆症と診断する.本診断基準ではこの「その他の脆弱性骨折」をWHOが定義する主要な非椎体骨折6部位から大腿骨近位部骨折を除いた,肋骨,骨盤(恥骨,坐骨,仙骨を含む),上腕骨近位部,橈骨遠位端,下腿骨に限定した点も特筆される改訂点である.これはこれらの部位の骨折に関する疫学的知見が豊富で,骨折リスク上昇をきたす脆弱性骨折であることが明らかであるためである.「脆弱性骨折」が新たに定義された点も注目される.脆弱性骨折は一般に「軽微な外力」で発生した骨折とされるが,これまで国内外でその定義は曖昧であった.本基準では「軽微な外力とは,立った姿勢からの転倒か,それ以下の外力をさす」と明記された.ただし,臨床現場では外力の程度を明瞭に区分することができない例も多数存在し,そのような例では脆弱性骨折かどうかは医師の判断に任せるべきであろう.テリパラチドの治療対象が重症骨粗鬆症であることから,診断基準に重症骨粗鬆症の定義を含めることが求められていた.そこで委員会で検討された結果,基準を一律に策定するのではなく,これまでの報告に記載されている重症骨粗鬆症と考えられる定義を記載することとなった.なお,原発性骨粗鬆症の診断には鑑別診断が欠かせず,低骨量をきたす骨粗鬆症以外の疾患の除外を行ったうえで診断基準を用いることが重要である.続発性骨粗鬆症については,『ステロイド性骨粗鬆症の管理と治療ガイドライン2014年版』11)以外には診断基準,薬物治療開始基準が設定されていない.Ⅵ おわりにわが国では約1,280万人(2005年時点)の骨粗鬆症患者が存在すると推計されているが,治療がなされているのはそのうちの20~25%といわれ,治療率の低さが問題となっている.さらに脆弱性骨折例に対する再骨折防止のための治療が全く不十分であることも広く知られている.2012年に改訂された診断基準では椎体または大腿骨近位部の脆弱性骨折の既往があれば,骨密度に関わらず,骨粗鬆症と診断して治療を開始することが可能となった.この改訂によりこれまで予防が実施されなかった脆弱性骨折例で骨粗鬆症の診断や治療が適切に実施され,骨折の連鎖が防止されると期待される.参考文献1) Riggs BL, O’Fallon WM, Lane A, et al:Clinical trial of fluoridetherapy in postmenopausal osteoporotic women:Extended observations and additional analysis. J Bone MinerRes 9:265-275, 19942) NIH Consensus Development Panel on Osteoporosis Prevention,Diagnosis, and Therapy:Osteoporosis prevention, diagnosis, andtherapy. JAMA 285:785-795, 20013) Stone KL, Seeley DG, Lui LY, et al;Osteoporotic FracturesResearch Group:BMD at multiple sites and risk of fracture ofmultiple types:long-term results from the Study of OsteoporoticFractures. J Bone Miner Res 18:1947-1954, 20034) Klotzbuecher CM, Ross PD, Landsman PB, et al:Patientswith prior fractures have an increased risk of future fractures:a summary of the literature and statistical synthesis.J Bone Miner Res 15:721-739, 20005) FRAXR WHO 骨折リスク評価ツール(http://www.shef.ac.uk/FRAX/)6) Kanis JA, Melton LJ 3rd, Christiansen C, et al:The diagnosisof osteoporosis. J Bone Miner Res 9:1137-1141, 19947) 折茂 肇,杉岡洋一,五來逸雄ほか:原発性骨粗鬆症の診断基準(1995年).Osteoporosis Japan 3:669-674, 19958) 折茂 肇,杉岡洋一,福永仁夫ほか:原発性骨粗鬆症の診断基準(1996年度改訂版).日骨代謝会誌 14:219-233, 19979) 折茂 肇,林 泰史,福永仁夫ほか:原発性骨粗鬆症の診断基準(2000年度改訂版)総説.日骨代謝会誌 18:76-82, 200110) 宗圓 聰,福永仁夫,杉本利嗣ほか:原発性骨粗鬆症の診断基準(2012年度改訂版).Osteoporosis Japan 21:9-21, 201311) Suzuki Y, Nawata H, Soen S, et al:Guidelines on the managementand treatment of glucocorticoid-induced osteoporosisof the Japanese Society for Bone and Mineral Research:2014 update. J Bone Miner Metab 32:337-350, 2014